理由の無い偏見:機会不平等 [社会]
一時期話題になった書籍を図書館で見つけたので、借りてみた。
本書で主張されていることは、筆者の思い込みがほとんど。証拠として挙げられていることは関係者のインタビューのみ。一応、反対派の意見も取り上げられているがなぜ反対派が間違っているかについての説得力ある主張は見られない。
この本で書かれている不平等はいくつかあるので、それについての感想を以下に記す。
1.高齢者の格差:確かに高齢者の格差にまったく問題が無いとは思わないが、高度成長期という一番恵まれた時期を過ごした高齢者の生活が立ち行かないのは自業自得の面が無いとはいえない。世代間格差を見逃して、高齢者の生活が格差によって苦しいと主張するのは、問題の本質を見逃しているといわざるを得ない。
2.学童保育・健康学園の問題:学童保育、健康学園というカタチで税金を使うのがいいのかどうかについての考察が存在しない。自治体の財政が厳しいのは分かっているはずなのに、財政についてはスルーされている。また、この点についてのインタビューは明らかに左派のイデオロギーに偏った人が選ばれており、適切ではないと感じられる。
3.教育格差:これがこの本で一番いいたい格差再生産につながるはずだが、明確な根拠が示されていないのが致命的。国立大学における親の収入など数値として示すことのできる方法はいくらでもあるはず。明確な根拠を示さずに教育格差が広がっていると主張するのでは、その主張が正しいかどうか判断のしようが無い。
4.遺伝子による格差:科学的根拠を示さずに、小説を引用して危機をあおるのでは、悪徳商法と大差ない。
5.銀行への公的支援の否定:金融危機には銀行のバランスシートの穴を埋めて信用収縮を防ぐ必要があるのは現在では明確である。ただ、この本が書かれたのは2000年なので、この点については間違っていても仕方ないと思う。
全体的に結論ありきで、根拠の無い主張が繰り返されており、まともに読む本とは思えない。amazonのレビューの評価が高いのはまったく持って理解できない。
★(☆半分)
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