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現在の経済状況を斬新な視点で説明した名著:人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか [経済]


人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか

人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか

  • 作者: 水野 和夫
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2007/03
  • メディア: 単行本



現在の経済状況について斬新な視点から、的確に説明した本書。経済は専門ではないが、この本の持つ説得力と、この本が与えてくれた視点には感動している。
値段は高いが、その値段に見合った価値のある一冊。

【目次】
第1章 覆される戦後経済の常識
―分水嶺となった一九九五年(日本のデフレーター、史上最長のマイナスに―デフレだと景気は回復しないのか ルービンの「強いドルは国益」は米国の「金融帝国」化宣言―経常赤字の増加は成長の制約になるのか ほか)
第2章 重層的に二極化する世界経済
―再来する帝国の時代(テイクオフの条件が整うBRICs―日本は再近代化で危機を乗り切れるか 世界経済の二極化―先進国vs.BRICs ほか)
第3章 長期循環の「超」長期化と短期循環の「超」短期化
―不安定さ増す世界経済(密接不可分の関係にあるグローバル化と米国の「帝国」化 長期循環を「超」長期化させるグローバリゼーション ほか)
第4章 「大きな物語」の終わりと「バブルの物語」の始まり
―ストックがフローを振り回す時代(軍需・公共投資主導経済の終わり―インフレの時代の終焉 資産価格激変の時代の始まり―金融経済が実物経済を振り回す時代 ほか)
第5章 資本の反革命における二つの選択
―成長か定常状態か(誰のための、なんのための景気回復か―成長は政策目標となりえるのか 格差拡大と中流階級の没落―グローバル化の本当の脅威は雇用ではなく賃金 ほか)

1995年に世界経済のルールが変更され、国民国家中心の19世紀・20世紀型経済は終焉した。21世紀は定刻の時代であり、19世紀・20世紀型経済の最後の覇者であった日本が長引くデフレに苦しむ原因は新たな時代の経済に対応できていないからだ。
本書の主張を私なりにまとめると、以上のようになる。

本書がすごいのは、歴史の観点から現在の経済を説明し、将来への展望を説得的に語っていることである。
以下は本書で語られている内容から明らかになる現在の経済上の問題点の一例である。
詳細は本書に当たってみてほしい。
・日本のデフレはなぜ止まらないのか
・BRICsの発展はどれだけ続くのか
・格差社会はなぜ生じたのか。地域格差に対応するにはどうすればよいのか。
・米国の土地はどこまで下落するのか
・ドルの価値はいつ、どの程度下落するのか
・労働者の生活が苦しくなったのはなぜか

この本を読んだ感想としては、日本が新しい経済にまったく対応できていないことに恐怖を感じた。
意味の分からない道路を作りまくるような輩は論外にしても、従来のように成長こそが万能薬とばかりに実体経済の成長ばかり追うのは、輸出を主にする大企業は儲かっても、大多数の国民が幸せになれる道ではない。

多くの国民を幸せにするには、国内はゼロ成長を前提にして持続可能な社会を構築した上で、海外への積極的な投資を行うのが正しい道であると言う本書の主張には心から賛同することが出来た。
バカの一つ覚えのように成長志向だけではトヨタや任天堂のように輸出型の大企業は儲かるだろうが、多くの中小企業やドメスティック企業は政策の果実を受けられないので、国全体としてみると低成長に終わってしまうだろう。

経済政策に限らないが、国・企業の指導者は所謂団塊の世代が多く、過去の成功体験に縛られているので新しいルールに十分対応で規定ないように思えることが多い。
本書を読んで、国家の経済政策においても同じ間違いが繰り返されているように見える。

本書は、見た目は専門的過ぎて難しいようだが、経済学部の出身でなくとも、新聞に出てくる程度の用語が分かれば十分に納得の行く内容になっている。

最後にひとつだけ苦言を呈すると、本書がなぜ縦書きになっているか理解できない。
経済がテーマだけあって、文中には数字が頻出する。今の日本で算用数字より漢数字が読みやすい人はそう多くはないはずなのだが、なぜか本書のような内容でも縦書きで出版されてしまう。
縦書きより横書きが優れていると主張するつもりはないが、本書のように数字が頻出したり、アルファベットが使われるような書物は横書きで出版してくれたほうが読みやすい。

☆☆☆☆★(☆四つ半)



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