容疑者Xの献身 [小説]
東野圭吾の第134回(2005年)直木賞受賞作。
正直、直木賞については、「白夜行」「幻夜」「秘密」「片想い」「手紙」と見送られてきた後にやっと受賞したので、遅きに失しているとは思う。
本作がすばらしいのは、トリックを楽しむミステリとミステリの形式の中で登場人物の心情を楽しむ作品の両方が高いレベルで並存しているところ。
ミステリのトリックを考えながら、登場人物の心の動きに感動させられる作品は多くない。
トリックについては、未読の方のためにBlogで書くことは出来ないが、シンプル・イズ・ベストの言葉がふさわしいトリックになっている。
しかも、本書は所謂「本格ミステリ」とは異なり、トリック云々のくだりを除いても十分に楽しめる。
絶望から立ち直るきっかけを与えてくれた人に対する「献身」、複数の形が示されている友人に対する尊敬の念と友情、ラストシーンにおける絶望。これらの感情を、くどくならないがしっかりと描ききっている点はすばらしい。まさに、東野圭吾の持ち味が発揮されていると言える。
本書は分量自体は多くなく、あっさりと読むことが出来る。しかし、その多くない文章に楽しみがぎっちりと詰まっており、軽く読むにはオススメの作品である。
☆☆☆★(☆三つ半)
ちなみに、東野圭吾が直木賞を受賞した134回直木賞で、次点とも言えるべき評価で落選したのがこちら。
現在もっとも直木賞を受賞していないのが不思議な伊坂幸太郎の作品である。
他のブログの反応はこちら等。
概ね高評価のブログが多いようです。テレビを余り見ない私はよく知らなかったのですが、このシリーズはドラマ化もされていたのですね。
http://trialpc.sakura.ne.jp/blog/2008/05/x.php
http://kasyublog.blog89.fc2.com/blog-entry-367.html
http://ksnn.com/diary/?p=1276
死神の精度は結構いいと思います。
by うっしい (2008-05-18 17:23)
>うっしいさん
死神の精度はやっぱりいいのですか…
伊坂幸太郎は最近人気らしく、図書館に本がないのですよ。
あったら速攻で確保するのですが……
by book-sk (2008-05-18 18:14)