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医療に限界はあるのか:無痛 [小説]


無痛

無痛

  • 作者: 久坂部 羊
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 単行本



廃用身」、「破裂」に続く久坂部羊の第三作。
今までと感じが異なるが、面白さは一番上かもしれない。

今までの「廃用身」、「破裂」は老人医療が主題であった。
日本人の死に時―そんなに長生きしたいですか」というノンフィクションの著作もあるように、筆者の一番得意図するテーマは老人医療がらみなのであろう。

しかし、本書の主たるテーマは医療の限界であり、サブテーマは刑法39条だ。
刑法39条(心神喪失、心神耗弱)については、さまざまな法律家、作家が挑んだテーマであり、それだけだと手垢にまみれた感覚が否めない。
しかし、その使い古されたテーマに医療の限界を絡めたところに、筆者の持ち味と、才能が現れている。

医者は病気を治すことが出来るのか?
治る病気はほうっておいても直るものであり、治らない病気は医者がどれほど手を尽くしても直らないのではないだろうか?
さらに、「病気」には、医療保険で治療の対象となる狭義の「病気」だけでなく、犯罪性向・性癖と言ったものまで「病気」に含まれるのではないだろうか?

このテーマは重たいテーマであり、読者としては考えずには居られない。
筆者は医者の立場から書いているが、法律をかじった身としては、法律家も刑という「治療」で犯罪性向という「病気」を治療できるかどうかは、結論の出ていない、重たいテーマである。

本書は外見から、病気と犯罪性向を正確に診断できる医者が主人公であり、その医者が精神異常とくくられるさまざまな容疑者を見ながら、事件を解決してゆく。
サトミ、佐田、イバラの3人は一般人なら全て異常者と言う一纏めにしてしまうだろう。しかし、それぞれに刑を適用するのが適当かどうかは悩ましくあり、その悩みを抱きながら読むのが本書の楽しみ方のひとつである。

筆者も三作目になり、エンタテイメントとしては、今までのにさくを越える面白さを誇っている。
難点は、医者が書いているだけに、殺人のシーンは異常にリアルであり、非常に怖いことぐらいだろう。逆に言えば、スプラッタが好きな人にはそういう読み方からもオススメできる。

☆☆☆☆(☆四つ)





他のブログの反応はこちら等。
みなさん、思ったことを長々と熱意を持って語っておられます。
面白さ、テーマ性、完成度と読書好きのつぼを突く傑作です。
http://blog.goo.ne.jp/sb004ah/e/c9975cdd8a16a3ff136c8861a9d6e165
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コメント 2

藍色

TBありがとうございました。

考えさせられる部分もありましたが、
スプラッタが嫌いなので、後味の悪さが残る作品でした。

また合う記事がありましたら、TBお気軽にどうぞ。
by 藍色 (2008-07-08 03:30) 

book-sk

>藍色さん
コメントありがとうございます。

スプラッタシーンはちょっときついですよね。朝の通勤で読んで、ちょっとつらかったです。

また、合致する記事があったらTBさせていただきます。

by book-sk (2008-07-08 20:51) 

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