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クロスファイアへとつながる小説:鳩笛草 [小説]


鳩笛草―燔祭・朽ちてゆくまで (光文社文庫)

鳩笛草―燔祭・朽ちてゆくまで (光文社文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2000/04
  • メディア: 文庫



宮部みゆきが超能力者の悲劇と葛藤を描く短編集。
その中の一作「燔祭」を元に描かれたのが「クロスファイア」である。

【目次】
朽ちてゆくまで
燔祭
鳩笛草


本書の短編には登場人物・世界観等のリンクは存在しない。本書の短編をつなぐのは、登場人物が全て超能力者であり、超能力に対して恐れ・葛藤・悩みといったネガティブな感情を持っている点である。

この宮部みゆきが描く超能力者を読むたびに、伊坂幸太郎が描く明るい超能力者との違いを思わずには居られない。
宮部みゆきのほうがおそらくリアルで、伊坂幸太郎のほうが圧倒的にスカッとする。宮部みゆきはリアルを感じさせ、伊坂幸太郎は極上のフィクションを提供してくれる。
どちらがいいというのではなく、作風の違いであり、どちらとも面白いことには違いがない。

私が本書の3部作の中で、一番気に入ったのは「鳩笛草」。超能力を使って人生を渡り歩いてきた女性が、能力の衰えに瀕してパニックになり、思い悩むと言うストーリー。
はっきり言うとありきたりな筋書きだが、その筋書きで人を感動させ、思い悩ませる圧倒的な描写力を堪能することが出来る。本書はこの「鳩笛草」に代表されるように、圧倒的な情景描写と心理描写で自らを超能力者の立場において物語の世界に没頭することが正しい楽しみ方だ。
ストーリー自体はどちらかと言うと平凡、一発勝負なのだが、物語に没頭できるのは凄い。

この一発勝負の物語を膨らませた「クロスファイア」は圧倒的な描写力に、ストーリーとしての複雑さも加わってすばらしい小説に仕上がっているのだが、その元ネタである本書を読んでいるとその違い・進化を楽しめる。

宮部みゆきの熱狂的なファンなら読んだことのあるだろう本書だが、宮部みゆきの本をかじったことがある程度の人は盲点になっているだろうから、是非挑戦してほしい。小品ならではの慎ましやかな面白さが存在する。

☆☆☆★(☆三つ半)





他のブログの反応はこちら等。
ネガティブな反応のエントリもありましたが、圧倒的な描写力に感心し、はまったエントリが多いようです。
また、お決まりですが、「クロスファイア」との関連は必須のようですね。
http://plaza.rakuten.co.jp/fcshiba/diary/200808020000/
http://fourwbook.fourw.net/e18345.html
http://strawberrymix.blog45.fc2.com/blog-entry-543.html
http://aaa-c-aki.txt-nifty.com/honnikki/2008/06/post_cff4.html
http://kiseki.hontsuna.net/article/1793574.html
http://torao.cocolog-nifty.com/review/2004/10/_.html
http://kuronekotei.blog17.fc2.com/blog-entry-27.html
http://blogs.yahoo.co.jp/miya_ne2002/1164930.html



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コメント 2

まる

はじめまして。
トラックバックありがとうございます。
拙いブログなのに、こちらにリンクも貼っていただき、恐縮です。

私も表題作が一番好きなので、うれしいです。
これからはこちらの記事もチェックしますね!
by まる (2008-08-08 12:29) 

book-sk

>まるさん
コメントありがとうございます。
こちらこそよろしくお願いします。
この本では、私も表題作が一番だとおもいましたよ。
by book-sk (2008-08-08 21:31) 

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