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ワーキングプア問題に火をつけたNHKスペシャルの書籍化:ワーキングプア―日本を蝕む病 [社会]


ワーキングプア―日本を蝕む病

ワーキングプア―日本を蝕む病

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2007/06
  • メディア: 単行本



ワーキングプアという言葉を一気に有名にした、NHK取材班の取材をまとめた一冊。
元がテレビの取材だけあって、ワーキングプアのショッキングな部分をうまく切り取っている。
ただし、本書の描くワーキングプアには若干疑問もあるのだが、それについては以下で述べることにする。

【目次】
1 「貧困」の闇が広がる日本
2 ホームレス化する若者
3 崩壊寸前の地方
4 夢を奪われた女性
5 グローバル化の波にさらわれる中小企業
6 死ぬまで働かざるをえない老人
7 荒廃を背負う子ども
8 現実に向き合う時


本書は、2006年に行われたNHKスペシャルのワーキングプアの取材を書籍化したもの。ワーキングプアと言う言葉を一躍有名にした番組取材の書籍化であり、インパクトに満ちあふれている。
世間の流れに取り残されてワーキングプアにならざるを得なかった人をしっかりと描いており、一歩歯車が狂えば、誰でもワーキングプアになってしまう恐怖がにじみ出てくる。

「高学歴ワーキングプア」のエントリで私が書いたように、自分で夢を追いかけた結果の高学歴ワーキングプアと異なり、本書で描かれているようなワーキングプアは基本的に補助すべきだと考える。
負の所得税等で、働いているが所得の低い人には補助を出すようにすれば、働いた方が損と言うことはなくなり、社会の安定にも資するのではないだろうか。

このように、基本的にワーキングプアは社会によって救われるべきだし、そういう社会の方がよいと思う私だが、本書の論調の中には賛同できない点が2点存在している。

1.地方へのこだわり
本書の中に出てくるワーキングプアの一部には、地方に住むことにこだわるあまり、ワーキングプアになってしまっている人たちがいる。生活保護を受けると家を売らなければならないため、生活保護を拒否し、ワーキングプアになっている角館の洋品店店主や、限界集落にこだわり続ける大家族などがその例だ。
地方に住むのが悪いとは言わないし、人口過密緩和のためにも一定程度は地方の人口が維持された方がいいのだが、自分で地方暮らしを選択しておいてワーキングプアだから救ってくれというのは間違えている。

現在の地方には、概して生活できる限界を超えた人口が存在しており、日本の活力を奪う結果になっている。住み慣れた地方と言っても、ほかの場所に住んでみないとそこが本当に自分に合っているかわからないし、友人関係なんてどこに行っても新たに作ることができる。生活ができないのに生まれ故郷にこだわるのは贅沢で、自分が生活できる場所を求めて行動することを求めるのは、適切な自己責任の範囲であるはずだ。
格言にもあるとおり、人間到る処に青山あり。住めば都。

ちなみに、大分県の教員採用汚職も、地方にこだわる人によって引き起こされていると見て間違いない。大分ではおそらく、地元に安定した就職など、教職員か地方公務員程度であろう(もしかしたら地元マスコミや地方銀行もあるかな)。地方に住むことにこだわるから、地方における安定した職業である、教師になるために汚職をしてしまうのだろう。
この汚職事件について、Blog界隈では理解に苦しんでいる人が多いが、そういう人はおそらく地方を知らないか、地方にこだわる心情が理解できていないのでは無かろうか。
東京に生まれ育ったのであれば、地元の就職など教員よりいいものがいくらでもあるので、汚職などはあそこまで大規模には起こりようがない。

2.昔の社会の賛美、まじめに働いた人が報われるべきとの幻想
まじめに働いた人は報われるべきと言う主張が本書には頻繁に出てくる。が、これは間違えた主張だ。
金銭的に報われるかどうかは、その人の仕事にどれだけ多くの人がお金を出そうとするかによって決まる。つまり、社会に役立っている人が報われるのであり、いくらまじめにやっていても社会に必要とされない仕事に従事している限りは報われないのが当然だ。
まじめにやっている人全てに金銭的に報いようとしようとすると、税金の投入などで意味のない仕事が温存され、社会に役立つ仕事をしている人が馬鹿を見ることになる。本書では岐阜のプレス工場の例が出てくるが、洋服の丁寧なプレスが求められていないのであれば、基本的には転職を考えるべきで、国はそういう転職がスムーズに行くように支援するべきだ。

本書では、まじめに働いた人が報われるべきとの幻想がエスカレートして、昔はよかったという論調すら見られる。
昔の社会は、能力のある人に十分な報酬を与えずに、あまり能力の無い人にも十分な報酬を約束していたのだ。つまり、能力のある人が犠牲になっていたのだが、今の社会は能力の無い人が犠牲になっている。
生活が立ち行かないほどになった人には、社会が手をさしのべるべきだが、そのやり方は昔のように能力のある人が割を食う形でなされるべきではない。

この点に似た主張はFIFTH EDITIONさんでもなされている。
http://blogpal.seesaa.net/article/13143745.html
ワーキングプアの救済と、間違えた努力にインセンティブを与えることを混同してはならない。


このように、私は若干疑問に思ったところもあるが、考える材料としては良質であり、元ネタがテレビの取材であることを知っていれば、本書に一方的に影響されてしまうこともないであろう。
テレビ放送を見ていない人でも、せっかく本になっているのだから、読んでみるといいと思う。結構かんたんに読めてしまいます。

☆☆☆☆(☆四つ)

他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://blog.livedoor.jp/kkssuukkee/archives/51085241.html
http://kumapooh0410.blogspot.com/2008/09/blog-post_9746.html
http://mask.livedoor.biz/archives/51709148.html
http://huzu.cocolog-nifty.com/huzu/2008/07/post_204d.html
http://blogs.dion.ne.jp/sayopee_blog/archives/6236018.html
(ネガティブな評価ではないが、一言意見があるエントリ)
http://yo-shi.cocolog-nifty.com/honyomi/2008/06/post_0e3b.html
http://ronron2008.blog.so-net.ne.jp/2008-07-06
http://blogs.yahoo.co.jp/zenzen_diamond/49714033.html
(内容の感想にとどめているエントリ)







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