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子供扱いするべき国たち:最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?" [社会]


最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?

最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?

  • 作者: ポール・コリアー
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2008/06/26
  • メディア: 単行本



中国やインドは豊かになった。それにつづいて豊かになってきている国も多い。
実際、世界60億人の人口のうち、発展途上国の人口は50億人。そのうちの40億人は確実に発展してきている。
しかし、残りの10億人は豊かになるどころか、この20年で見てもさらに貧しくなっている。
本書は、そうした脱落してゆく10億人にターゲットに書かれた本である。



【目次】
はじめに
第一部 何が本当の問題なのか?
 第一章 脱落し崩壊する最底辺の10億人の国
第二部 これらの国をとらえる数々の罠
 第二章 紛争の罠
 第三章 天然資源の罠
 第四章 内陸国の罠
 第五章 小国における悪いガバナンスの罠
第三部 グローバル化がもたらしたもの
 第六章 世界経済の中で好機を逸する最貧国
第四部 われわれのとるべき手段
 第七章 救済のための援助となっているのか?
 第八章 軍事介入
 第九章 法と憲章
 第十章 周縁化を逆転させる貿易政策
第五部 最底辺の10億人の国にとっての戦い
 第十一章 われわれの行動の指針


本書は時代に逆行して貧しくなってゆく最底辺の10億人をターゲットにしている。
その多くはアフリカの国々だが、アフリカだけを対象にしたものではない。アジアにも、北朝鮮・ミャンマー・ラオス・カンボジア・アフガニスタンと最底辺の10億人の国は存在する。

目次の第二部を見てもらえればわかるが、それらの国々は大きく分けて4つの罠に入り込んでいるがために、発展から脱落してゆくのだ。
内戦・クーデターと言った紛争の罠。ろくな産業がないのに天然資源だけは豊富に産出するという天然資源の罠。産業・資源がない内陸国など国として成り立つはずがないのに、何故か独立国として存在してしまう内陸国の罠。そして、アジアにおける最底辺の10億人の国に見られるように、劣悪なガバナンスによって国民が搾取され続けるという悪いガバナンスの罠だ。

本書はそれらの罠から抜け出すための政策も第四部で提言している。
ただお金を渡すだけではない効果的な援助。内戦、クーデター、劣悪なガバナンスから国民を守るための軍事介入。人治国家の極致にあるそれらの国々に対する法と憲章。そして、最底辺の10億人が着実に食い扶持を手にするための自由貿易政策。

現在の世界では、最底辺の10億人の多くが住む失敗国家に対しても、独立国として一人前の扱いをすることが半ば「常識」となっている。
しかし、本書の提言する解決策は一人前の扱いをやめて、失敗国家に対しては、子供を扱うがごとく保護と監督を要求する。それはまるで、子供の頃に小さい子供を混ぜて野球チームを作ったときに、誰もが小さい子供には本気を出さずに手加減することが求められるように。最底辺の10億人が住む国家に対してもそういう扱いが求められているのだと思う。

理想に基づいて、失敗国家に対しても一人前の扱いを要求することは感情的な自己満足を得ることができるかもしれない。しかし、そうした扱いでは最底辺の10億人は救われない。
本書にも例があるように、貿易するものすら持たない失敗国家のゴネによってWTOの交渉が失敗に追い込まれる様な自体は非常にばかげている。
最底辺の10億人を救い、世界から貧困を無くしていくためには、パターナリズムの観点から先進国と失敗していない発展途上国がスクラムを組んで、失敗国家が正常に戻るまで子供扱いしていくべきなのだ。

最底辺の10億人に対する一般論としては、非常に良くまとまっているし、現状に加えて解決策も述べられているのが非常に高ポイント
私たちのもっとも身近にある失敗国家、北朝鮮の瀬戸際戦略のような例外的な現象には適応できない(ほとんどの失敗国家は隣国も貧しいため、瀬戸際戦略のような戦略は取り得無い)が、「発展途上国」とひとまとめにせずに、最底辺の10億人を見つめることのできる良書である。

☆☆☆☆★(☆四つ半)

余談だが、本書を読んで気になったアジアの国が2カ国存在する。
これについては、余力があったら別エントリで書いてみることにする。


他のBlogの反応はこちら等。
皆さんポジティブな評価です。
http://plaza.rakuten.co.jp/sebook/diary/200901220000/
http://afraidzin.sblo.jp/article/25887541.html
http://ameblo.jp/kanmani/entry-10151749270.html
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