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資本主義の修正が叫ばれる今だからこそ読みたい:資本主義と自由 [経済]


資本主義と自由 (日経BPクラシックス)

資本主義と自由 (日経BPクラシックス)

  • 作者: ミルトン・フリードマン
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2008/04/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



サブプライムローン問題に端を発した金融危機のさなかにあって、「新自由主義は間違えていた」「市場に全てを任すことはできない」「資本主義は終わった、何らかの修正が必要だ」このような主張が多く見られるようになってきている。
しかし、そうした世論に迎合した短絡的な意見を信じるかどうかは、本書を読んでから考えても遅くない。

【目次】
序章
第1章 経済的自由と政治的自由
第2章 自由社会における政府の役割
第3章 国内の金融政策
第4章 国際金融政策と貿易
第5章 財政政策
第6章 教育における政府の役割
第7章 資本主義と差別
第8章 独占と社会的責任
第9章 職業免許制度
第10章 所得の分配
第11章 社会福祉政策
第12章 貧困対策
第13章 結論


本書は1962年に出版された本だが、日経BPクラシックスシリーズとして復刻される。新版の本書で解説を書くのは小泉・竹中改革でブレーンとして活躍した高橋洋一である。
本書は、1962年出版とは思えないぐらい現代的だ。ベーシック・インカムに類似した「負の所得税」は主張されているし、教育バウチャー、法人税の廃止等、現代でも最先端と思われる議論が満載されている。


本書の基本的な作りは、政府の介入は歪みと害悪をもたらすことを論理的に証明し、市場に任せることの優位性を説明している。
2009年現在に目を転じると、サブプライムローン問題が発覚した後、マスコミにおいては、市場に任せることの弊害や、自由主義を修正しようとする論調が目立っている。
しかし、本書を読めば、自由主義を制限するのは誤りであることが理解できると思う。短期的には痛みが生じたり、不具合が発生したように見えることもあるだろうが、長期的に見ると、自由主義を制限することは高くつく

例えば、本書の第2章には例示として、政府がやる理由がない政策が14列挙されている。
これらは、本書執筆時に様々な弊害が生じていた問題だ。
1.農産物の買取保証価格制度
2.輸入関税または輸出制限
3.農産物の作付面積制限や原油の生産割当てなどの産出規制
4.家賃統制
5.法定の最低賃金や価格上限
6.細部にわたる産業規制
7.連邦通信委員会によるラジオとテレビの規制
8.現行の社会保障制度、とくに老齢・退職年金制度
9.事業・職業免許制度
10.いわゆる公営住宅および住宅建設を奨励するための補助金制度
11.平時の徴兵制。「自由市場にふさわしいのは、志願兵を募って雇う方式である」
12.国立公園
13.営利目的での郵便事業の法的禁止
14.公有公営の有料道路


このリストを見ても近年の政策が逆行していることがよくわかる。
8.の年金については、これだけ国家が年金を運営することの問題が明らかになった現在においても、年金廃止や完全積み立て姓への移行は議論にあがらず、年金への国庫負担の増加と介護保険の新規創設という全く逆の方向に動いている。
9.の事業・職業免許についても、インターネットにおける薬の販売を禁止して、薬剤師という利権の拡大が図られている。フリードマンによれば、医師ですら免許制にするのは適切ではなく、認定制度自体は残した上で、医師資格を持つ人にかかるか、怪しげな民間療法を選択するかは個人の自由とした方がうまくいく
医師不足が言われて久しいが、医師免許を持たない者でも医療行為を行えるようにすれば、医師不足は一発で解消する。少なくとも、医療行為の幅はどんどん狭めて、看護師による注射や簡単な診察は認めるべきだろう。


政治が不安定になり、官僚たちは自らの許認可権を広げるべく様々な場面で暗躍している。そして、経済不況を背景に、マスコミは(おそらく小泉憎しの感情から)自由を制限する論調を堅持している。
こうした現状にあるからこそ、本書を読んで自由の威力を実感してほしい。フリードマンが本書を記した1950年代~60年代においても、(1929年の)大恐慌の後に政府が規制を強めたために、様々な弊害が生じていたのだ。

一時の感情に流されて、政府の権限を強化すると、10年後には必ず後悔する
本書を読んだ私の感想はこの一言に尽きる。

☆☆☆☆☆(☆五つ。満点)

本書は非常に訳がうまくて読みやすいのだが、それでも若干難しかった人は橘玲の「雨の降る日曜は幸福について考えよう Think Happy Thoughts on Rainy Sundays」を読んでから再挑戦してみてほしい。
自由のすばらしさと、権力による規制の問題点が明らかになるはずだ。



他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://vamos11.exblog.jp/10045710/
http://blog.goo.ne.jp/shimofusa_2005/e/c59418e6404d25f36d8c8099ad1b0324
http://d.hatena.ne.jp/makoga/20090113/1231857398
http://d.hatena.ne.jp/iga19/20080821/p1
http://stjofonekorea.blog6.fc2.com/blog-entry-1065.html
http://blog.goo.ne.jp/ota416/e/d75640f9e9731c9e99ab8abb9ec639f2

皆さん高い評価。これだけの本が、これだけうまく訳されていれば当然だが。
私としては、左派の人が内容を批判しているエントリがあれば見たかったのだが、検索上位には存在しなかった。確かに本書の論理的な内容を批判するのは難しい。
格差を非難する人は本書を読んで、それでも反論できるかどうかを考えて貰いたい。







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