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至極まっとうな見方による日本経済の歴史がわかる:日本経済を学ぶ [経済]


日本経済を学ぶ (ちくま新書)

日本経済を学ぶ (ちくま新書)

  • 作者: 岩田 規久男
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2005/01
  • メディア: 新書




岩田規久男が日本経済の歴史について書いた本書。
筆者の立ち位置は、潜在成長率を高めることで経済成長ができるとする野口悠紀夫と、金融政策によるインフレターゲットを成長策の重要政策と位置づける高橋洋一の間ぐらいになる様に思えた。
どっちかというと、高橋洋一に近いのかな……。

どちらにしても、至極まっとうな経済観に裏付けられており、本書を読めば、マスコミが意味なく語る日本経済の歴史にだまされることは無くなるはずだ。

【目次】
第1章 戦後復興から高度経済成長期まで
第2章 バブル景気から「失われた一〇年」へ
第3章 日本的経営とその行方
第4章 日本の企業統治
第5章 産業政策と規制改革
第6章 構造改革と少子・高齢化
第7章 日本経済の課題と経済政策


戦後日本が大きく生長した主な要因は通産省による産業政策である―
貿易黒字は競争に買った良いことで、貿易赤字は競争に負けた悪いことである―
失われた10年の主な原因は、日本経済の構造が時代遅れになったためである―
こうしたことがマスコミで語られたら、信じてしまいそうな、一見説得力のある意見である。
しかし、筆者は、こうした「俗説」の誤りを指摘し、日本の産業政策は生長を加速するどころか無責任な官僚が市場を歪めただけであるし、失われた10年の主たる原因は金融政策の失敗によるデフレであるとする。

筆者の主張は、わかりやすく説得力があるとともに、新書の割にはボリュームを持った記述なので、戦後から本書が発売された小泉時代までの日本経済を俯瞰することができる。

(テレビ御用達ではない)学者の書いた本であり、奇をてらったところはないのだが、田中角栄を地方に金を回しすぎて年の成長率を奪う愚作を犯し、日本の経済成長を止めた張本人であるとするなど、マスコミ的一般論に毒されていない、シンプルで、筋の通った議論を読むことができる。

本書が書かれた、2005年から4年が経過し、日本経済は復活の後に再び減速してしまった。
麻生政権は有効な経済対策を打てないでいるし、野党民主党の主張する経済対策は輪をかけて意味が無く、成長の足を引っ張るものだ。
こうした現在の状況だからこそ、本書で日本経済を振り返るとともに、正しい経済を見る目を養うのは悪くない。

本書にはそれだけの価値とクオリティが備わっている。

☆☆☆☆(☆四つ)


他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://hatesate.dip.jp/weblog/2009/01/post_477.html
http://hri.blog.ocn.ne.jp/hamacho_blog/2009/01/post_f584.html
http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20050518/1116429501
http://babyloncafe.cocolog-nifty.com/babylon_cafe/2005/05/__81b6.html
http://d.hatena.ne.jp/scotty/20051207/1133947414
(ややネガティブな評価のエントリ)
http://blog.livedoor.jp/herm_jp/archives/51134641.html

基本的には、評判が良いのですが、詳しい人には物足りないという意見も。
大学の教養課程、高校生、経済を専攻してこなかった社会人あたりにはぱっと読めて、基礎的な経済観が身につく良書だと思う。






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