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海堂尊の時事ネタ小説:ジーン・ワルツ [小説]


ジーン・ワルツ

ジーン・ワルツ

  • 作者: 海堂 尊
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/03
  • メディア: 単行本



現在問題になっている、産科、小児科を中心とした医療崩壊をネタにした海堂尊の時事ネタ小説。
海堂尊らしさはあるのだが、「チーム・バチスタの栄光」シリーズにくらべるとかなりシリアス。言い方を変えれば若干地味だ。

<本書のストーリー>

主人公の理恵は帝華大学(東京大学をモデルにした大学)の医学部助教。厚労省の無能さに腹を立てる理恵は、子供がほしくても授からない人が子供を持てるようにするために、代理母出産を企む
体制派にありながら理恵の理想に理解を示す助教授の清川はその計画を知ったときにどのように行動するのか?
そして、代理母出産の計画は、あくまでも現在の医療崩壊を食い止めるための偉大なる第一歩と考える、理恵の本当の計画はどういったものであったのか……


本書を貫くテーマはずばり医療崩壊。
ネット界隈でよく触れられている、難産の患者を手術で死なせた産婦人科医が警察に逮捕された事件(福島県立大野病院の事件がモデル)や、医療制度を改革し、大学の医局を崩壊させた制度改正が小説の効果的な舞台となっている。

そして、海堂尊が本書で描くのは、地方の産科医療がすでに崩壊した今、首都東京の医療はどうするのか?という問題提起と、産婦人科から医療法会が始まった理由についての考察である。

本書で述べられているように、出産は元来危険なもので、死産・流産・奇形等の危機は素人が思っているよりもはるかに多い。そして、医者が積極的に意見を述べることが美徳とされないので無理解が加速される。それに官僚の無策が加わって、産婦人科は今や瀕死の状況になってしまっているのだ。

このように、非常に重たいテーマに対して正論で挑んだ本書だが、海堂尊らしく最後はポジティブな結論を迎えており、無駄に暗くなることはない。
そして、久坂部羊とちがって、変なルサンチマンもないので読んでいて不快になることもない。

社会派とエンタテイメントが非常に良い水準で混ざった良作であり、全ての人、特に子供を持とうとする人は是非読んでほしい一冊である。

☆☆☆☆(☆四つ)

他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://snowfreak.blog54.fc2.com/blog-entry-86.html
http://blog.knock-out.chips.jp/?eid=837150
http://plaza.rakuten.co.jp/pahoo/diary/200904080001/
http://blog.goo.ne.jp/sakura_modern/e/c2279c1c5c88845909531e6683d056eb
http://raisin2007.blog121.fc2.com/blog-entry-557.html
http://d.hatena.ne.jp/koharuma/20090403/1238763292

エキセントリックな「チーム・バチスタ」シリーズより、本書の方が受けが広そう。
好意的な評価のエントリが多かったです。






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