地政学の古典:マッキンダーの地政学―デモクラシーの理想と現実 [社会]
地政学というと耳慣れない人も多いかもしれない。
Wikipediaの定義によると
地理的な位置関係が政治、国際関係に与える影響を研究する学問
であり、その地政学の古典が本書である。
【目次】
第1章 われわれの前途によせて
第2章 社会の大勢
第3章 船乗りの世界像
第4章 内陸の人間の世界像
第5章 さまざまな帝国の興亡
第6章 諸国民の自由
第7章 人類一般の自由
補遺 一九十九年一月二五日、ケドルセーの一事件について
付録(地理学からみた歴史の回転軸(一九〇四年)
球形の世界と平和の勝利(一九四三年))
●国家の運命は宿命づけられている
新聞報道などで、「国家のカラー」や「国家の性格」などを目にすることは多いと思う。そうしたカラーはどこから生まれるのだろうか?
多くの人は国民性や指導者に左右されると思っているのだろうし、そうした考えも間違いではない。しかし、国家の性格、ひいては国家の運命を形作る大きな要因はその国の地理的な条件である。
そうした事実は歴史からも明らかであり、本書は歴史をひもといて国家の地理的条件と国家の性格・運命が濃密な関係にあることをわかりやすく述べている。
●ランドパワーとシーパワー
本書では大陸国家が持つランドパワーと、海洋国家が持つシーパワーについての対立と、海からの攻撃からほど遠いハートランドの概念について解説されており、それらの事実は本書で語られる歴史と照らし合わせてもすとんと腑に落ちるのである。
地中海の制海権を握ったローマ帝国にランドパワーで対抗しようとしたカルタゴの名将ハンニバル。ハートランドを拠点に圧倒的なランドパワーでヨーロッパに迫ったモンゴル帝国。そして、第1次世界大戦においてハートランドを制圧しようとしたドイツに対抗した英国、南ア、インド、米国、日本と言ったシーパワー連合。
こうした考察が本書を地政学の古典にして基本として名高いものとしているのであろう。
●不朽の古典
本書の多くは第1次世界大戦後に書かれている。しかし、本書の概念は現代でも十分に通用するモノである。現に、筆者は後書きでハートランドを占める国がどこであれ、この理論は該当するという趣旨のことを述べている。
筆者の念頭にあったのはドイツであり、ソ連であろうが、時代を経た今ロシアや中国がハートランドを掌握しようとも筆者の考えは色あせることはない。そして、海洋国家として、シーパワーとして生きていかねばならない日本の立場も変わることはないだろう。
現代にも生きる地政学の古典。地政学を語るにはもちろん、外国との仕事をする人なども教養として読んでおいて損はない一冊である。
☆☆☆☆(☆四つ)
他のBlogの反応はこちら等。
http://blogs.yahoo.co.jp/tk_caesar/45023156.html
http://d.hatena.ne.jp/murap1/20081007/1223475345
復刻発売されたらしい本書。
見つけたエントリは少ないモノの、一見の価値は必ず存在する。
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