子供ではなく、大人が考えた空想の未来:極端な未来 経済・産業・科学編 [科学]
子供の頃、未来を想像して絵を描く課題をやったことのある人は多いと思う。
空飛ぶ車、宇宙や海底で生活できる都市……
もちろん、そんな未来予測は当たりっこないし、突飛な未来として実現したのは携帯電話ぐらいだろう。
じゃあ、そんな空想を科学に詳しい大人がやったらどうなるか?
そうした試みが本書である。
【目次】
序文 ホワイトハウス
はじめに 「極端な未来」とフューチャリストの仕事
第1章 イノベーション経済
第2章 未来の燃料
第3章 夢の長寿薬と人間の能力強化
第4章 地球温暖化の進行
第5章 トンデモ科学―ありえなかったことが実現する!?
本書は「はじめに」で書かれているように、未来予測のシンクタンクを主催する筆者が、2015年~2050年ぐらいをターゲットに未来予測を実施した本である。
そして、本書の特徴は、子供が大胆に未来を予測するかのごとく、かなり極端に未来予測を実施していることにある。現在の技術から確実に未来を「当てに行く」のでは無く、どうせどこかで大幅なイノベーションが起こるのだから突飛な予言をしておくというのが本書のスタンスとなっている。
そうした中で、本書はコンピュータ、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーと言ったあたりを中心に、水素エネルギーに少し触れる感じで未来予測がなされている。
特に、人体強化についてはかなり突っ込んで書かれており、寿命を延ばすと共に、スマートドラッグやインプラントなどの方法によって、「能力を高く保つ」ための医学が発展し、そうした薬・手術を行わない人は社会的に劣位に立たされて行くであろうという予測は非常に面白い。
本書が予測するような未来が本当に到来したら、パラリンピックのタイムはオリンピックのそれを上回る様な時代が到来することになる。
そのほかにも、水素エネルギーの実用化によって石油は枯渇前にエネルギーとしての役割を終えており、かつ、温暖化によって砂漠が広がるといった予測もなされている。
この予測が当たるなら、技術で一定のアドバンテージを持ち、温暖化しても砂漠化するほどの緯度にない日本は世界の中で優位を占めることができるのだろう。
本書は、突飛な予測をあえて行っているため、一見すると第5章以外の部分もトンデモ科学の本に見える。おそらく、本書の予測が当たることはないのだろうが、こういった極端な未来を考えて対応できるようにすることは無駄ではないし、実際には本書とは違った形で極端な未来が実現するのだろう。
普通の大人は将来を予測するにしても、現在の延長でしか考えることができず、10年先を考えたつもりでもおそらく3年~5年で実現してしまう。
そうした枠を取っ払って、あえて飛躍的な予測をしている本書は、タダのトンデモ本と見限るには惜しく、考えるきっかけとしては面白い一冊である。
☆☆☆★(☆三つ半)
蛇足になるが、本書では中国政府・インド政府の動向は大きなファクターとして出てくるものの、日本政府の動向には触れられていない。
その代わり、トヨタ・ホンダ・ソニー・富士通と言った日本メーカーの話題は頻繁に出てくる。
この状況には日本人として苦笑せざるを得ない。
他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://aabcdehiiioruzhry.seesaa.net/article/114042140.html
http://ameblo.jp/asongotoh/entry-10180906862.html
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/76bc2a2bea195dc92f29947bd5f84687
http://blog.goo.ne.jp/harunakamura/e/bc70fcbcce8aed751cdf7cd74fe31ebb
(ニュートラルな評価のエントリ)
http://d.hatena.ne.jp/shmmty/20090104/1231057746
amazonのレビュー評価は悪いが、Blogの反応は悪くない。
コンサルを使ったことがある人は、全てが意味ある内容で埋まっている本ではないのですが、本書の中に見るべきエッセンスを見いだすことができると思います。
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タグ:☆☆☆★ ジェームズ・キャントン
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