人類最悪の発明??:人類は「宗教」に勝てるか―一神教文明の終焉 [社会]
人類は「宗教」に勝てるか―一神教文明の終焉 (NHKブックス)
- 作者: 町田 宗鳳
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2007/05
- メディア: 単行本
人類にとっての一番の驚異はなんだろうか?
核兵器でも、地球温暖化でも、金融システムの崩壊でもない。
人類にとっての一番の驚異は一神教である。
これが本書の立場だ。
【目次】
第1章 エルサレムは「神の死に場所」か
第2章 世界最強の宗教は「アメリカ教」である
第3章 多神教的コスモロジーの復活
第4章 無神教的コスモロジーの時代へ
第5章 “愛”を妨げているの誰なのか
第6章 ヒロシマはキリストである
本来は人間の精神を安静に保ち、人々から争いを取り除いてくれるはずの”宗教”が、世界では争いの原因になっている。
イスラエルとパレスチナは聖地を巡って泥沼の争いを続けているし、イスラム原理主義者は米国への”聖戦”を呼びかけている。共産主義の中国はチベットやウイグルで宗教の弾圧を続けている。そのほか、アジアでもアフリカでも宗教によって様々な争いが巻き起こされてしまっている。
筆者はそうした争いを巻き起こす「一神教」を人類次第の敵だと定義する。
反面、無宗教を推奨するのではなく、多神教的なココロの持ち方を理想としている。
そして、この多神教的宗教観は日本人の実体にもっとも合致しているのだ。
多くの日本人は一応の宗教は持っていて神の存在を全否定はしていないものの、他の宗教を攻撃するような狭量さや攻撃性は持ち合わせていない。
キリスト教を信じていなくとも結婚式等で教会に行けば厳かな気持ちになるし、神道を信じていなくとも初詣で神社や神木に手を合わせたりする人が多いのではないだろうか。
筆者は「愛」という言葉を用いて、宗教的な気持ちを持ちながら他者を尊重することの重要性を説いている。
日本人には当たり前に思えるこの行動も、世界で理解できる人は少数派だ。
だからこそ、一神教文明に変えて多神教的宗教観を世界に広めて行かなくてはならない。
このあまりにも難しい命題に取り組むことが出来るのは、日本人ぐらいしかいないであろう。
そういう意味で、日本人なら、無宗教を自認する人も、何かの宗教を信じてる人も本書を読む価値は十分に存在する。
私は、直前に読んだ「さよなら、サイレント・ネイビー―地下鉄に乗った同級生」に触発されて、カルトに対する本として本書を手に取った。
その意に反し、本書はもっと壮大で、意味のある本であった。
これなら、自信を持って多くの人に勧めることが出来る。
☆☆☆☆(☆四つ)
他のBlogの反応はこちら
(ポジティブな評価のエントリ)
http://d.hatena.ne.jp/ast15/20090915/p1
http://hontabi.jugem.jp/?eid=218
http://kaysaka.blog.so-net.ne.jp/2009-04-24
isologeさんでは本書も参考に、良く考えられたエントリがあがっています
http://www.tez.com/blog/archives/001296.html
404 Blog Not Foundさんでも、本書の感想が……
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51160646.html
公的なものであれ、デファクトのものであれ、国教というものを持たない日本に生まれた幸せをかみしめながら呼んでほしい一冊です。
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