坊主丸儲け:螻蛄 [小説]
黒川博行の二宮・桑原シリーズ。
「暗礁」では沖縄が、「国境」では北朝鮮が舞台だったが、本書の舞台は東京だ。
本書は、二宮・桑原のいつものコンビが、伝統仏教の寺院が振り出した手形をきっかけに、寺宝の絵伝を手に入れ、それを売りさばこうとする中で、寺院の高僧・東京のヤクザ・怪しげな美術商といろいろな人に振り回されるストーリー。
良くも悪くも、いつもの黒川博行の小説だ。
極道・坊主・美術商と胡散臭い商売のオンパレードで、ドタバタ劇が楽しめる。
また、本シリーズの特徴である方言を交えたテンポのいい掛け合いも健在。
「おまえどこのもんや」(中略)「いわんかい。どこのもんや」(中略)
「歯が何本無くなるまで黙ってられるか、賭けてみるか」
「セワだ。セワ総業」
「どんな字や」
「伊勢の勢。羽根の羽」
「勢羽総業……。事務所はどこや」
「新宿だ」
「新宿の」
「三丁目」
「新宿三丁目の極道が、なんで大阪くんだりまで来た」
「知らねぇよ。行けっていわれたから来た。それだけだ」
「暗礁」で描かれた沖縄弁と大阪弁の掛け合いも良かったが、東京と大阪の言葉の掛け合いもテンポ・雰囲気とも十分楽しめる。
ヤクザが金を巡って争う割にはいつものように死人が出ない小説なので、純粋に笑えるのもポイントが高い。
好きな人は是非。興味を持った人はシリーズの最初から手に取ってみることをオススメできる小説だ。
☆☆☆★(☆三つ半)
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(ポジティブな評価のエントリ)
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シリーズものらしく、評価は高い。
早くも、次の舞台はどこになるのか?とシリーズ次作が待ち遠しくなる。
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