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役に立つ”思想”:日本思想という病 [哲学]


日本思想という病(SYNODOS READINGS)

日本思想という病(SYNODOS READINGS)

  • 作者: 芹沢 一也
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/01/19
  • メディア: 新書



5人の筆者のセミナー(講演?)を文書化したもの。
”思想”をテーマに、現代における”教養”と呼ぶにふさわしい、学術的・哲学的な香りに満ちた一冊。
【目次】
1章 保守・右翼・ナショナリズム 中島岳志
2章 中今・無・無責任 片山杜秀
3章 文系知識人の受難----それはいつから始まったか 高田里惠子
4章 思想史からの昭和史 植村和秀
5章 ニッポンの意識----反復する経済思想 田中秀臣

【著者紹介】
中島岳志(なかじまたけし)
1975年生。北海道大学公共政策大学院准教授。南アジア地域研究、日本政治思想史。『中村屋のボース』(白水社)によりアジア・太平洋賞大賞、大仏次郎論壇賞受賞。
片山杜秀(かたやまもりひで)
1963年生まれ。慶應義塾大学法学部准教授(有期、政治文化論担当)。専攻は政治思想史。著書に『近代日本の右翼思想』(講談社選書メチエ)などがある。
高田里惠子(たかだりえこ)
1958年神奈川県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程(ドイツ文学専攻)単位取得満期退学。桃山学院大学教授。著書に『学歴・階級・軍隊----高学歴兵士たちの憂鬱な日常』(中公新書)などがある。
植村和秀(うえむらかずひで)
1966年京都生まれ。京都大学法学部卒。京都産業大学法学部教授。専門は政治思想史、ナショナリズム論。著書に『丸山眞男と平泉澄----昭和期日本の政治主義』(柏書房)などがある。
田中秀臣(たなかひでとみ)
1961年生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。上武大学ビジネス情報学部教授。著書に『雇用大崩壊』(日本放送出版協会)などがある。

【編者紹介】
芹沢一也(せりざわかずや)
1968年東京生まれ。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了。SYNODOS代表。慶應義塾大学非常勤講師。専門は近代日本思想史、現代社会論。
荻上チキ(おぎうえちき)
1981年生まれ。評論家、編集者。メールマガジン「αシノドス」編集長。著書に『ウェブ炎上』(ちくま新書)、『社会的な身体』(講談社現代新書)などがある。


5者のセミナーからなる本書は、それぞれが独立しており、どのパートも読み応え抜群だ。
どれも甲乙付けがたく、読む人の興味分野によって順位が入れ替わる。そのぐらい平均してクオリティが高い。

第5章 田中秀臣氏の「ニッポンの意識----反復する経済思想」を読むと、現代の日本の経済学における状況が昭和初期の状況と非常に類似していることがわかる。
石橋湛山や河上肇と言った人たちの論争は、現代のリフレ派と構造改革派の論争を彷彿とさせる内容になっている。

第1章 中島岳志氏の「保守・右翼・ナショナリズム」を読むと、自民党のセンセイ達も勘違いしている保守と右翼の違いが非常に良くわかる。
そして、筆者の定義に従うと、現在の自民党は口では”保守”と言っているが、思考・行動は”右翼”のものであることがよくわかる。政権に一番近い野党の姿勢としては非常に危うく、残念だ。


このように、本書の特徴は常識では役に立たない”思想”を歴史と絡めて理解することで、現在の日本に起こっている事象や政治経済の状況を理解するための、非常に有益なツールとして提供してくれることにある。

”思想”や”哲学”と言った象牙の塔に隔離された人たちしか用の無いはずのものを、実社会に生きる私たちに有益な形で提供してくれる本書は、間違いなく一読の価値が有る。

☆☆☆☆(☆四つ)

他のBlogの反応はこちら
(ポジティブな評価のエントリ)
http://d.hatena.ne.jp/kurohige-ossadot/20100225/1267091587
http://d.hatena.ne.jp/JD-1976/20100129/p1
http://d.hatena.ne.jp/t-kawase/20100126/p1
http://yuuhikairou.blog.so-net.ne.jp/2010-02-17


案外と関連エントリが少ない印象。
非常にいい本なのに、テーマがテーマだけに取っつきにくいのかもしれない。


以下、本書の参考文献のうち気になったもの。
時間があれば読むかもしれない。
こんなに読み応えのある本なら、学生時代に巡り会いたかったなぁ
人間・この劇的なるもの
保守思想のための39章
日本とアジア
〈弱さ〉と〈抵抗〉の近代国学 戦時下の柳田國男、保田與重郎、折口信夫
北一輝――国家と進化
神聖喜劇〈第1巻〉
ある晴れた日に
廣松渉-近代の超克
近代日本の右翼思想
昭和恐慌の研究
危機の経済政策―なぜ起きたのか、何を学ぶのか
経済政策を歴史に学ぶ





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asa

トラックバックありがとうございます。

by asa (2010-03-19 07:38) 

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