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この国の危機対応のお粗末さ:半夏生―東京湾臨海署安積班 [小説]


半夏生―東京湾臨海署安積班 (ハルキ文庫)

半夏生―東京湾臨海署安積班 (ハルキ文庫)

  • 作者: 今野 敏
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2009/02
  • メディア: 文庫



シリーズものだそうだが、本書はいきなり読んでも十分に楽しむことが出来た。
ミステリと架空シミュレーションの中間的な小説だ。

本書のストーリー

東京・お台場で身元不明のアラブ人が行き倒れた。
行き倒れに立ち会った警察官も発病し、バイオテロが疑われる。
この国は、バイオテロに立ち向かうことが出来るのか??


本書の一番の見所は、日本がバイオテロに遭ったとき、きちんと対応できるのか?という点を絶望的な観点からきちんと描いているところだ。

例えば、お台場でバイオテロが疑われる事態が発生したとき、厚労省・警察庁は内閣官房の危機管理体制を通じて高速のお台場出口を封鎖する。ところが、その措置が実施されるやいなや経産省からクレームが入り、高速出口の封鎖は解除されてしまう。
ほかにも、保健所・病院を管轄とする厚労省、現場警察を管轄とする警察庁、海上保安庁を管轄とする国交省が縦割りで動き、横の連携が取れていないが故に、現場が混乱する様子も描かれている。

本書には自衛隊は出てこないが、実際のバイオテロがあった際には自衛隊(防衛省)や地方自治体(総務省)、学校(文科省)など、複数の役所が入り乱れて、船頭多くして船山に上る事態が発生することが容易に想像できる。
そういう意味では、本書の描く世界はそれなりにリアルだ。


本書はあくまでも警察官を主人公としたミステリ小説なので、現場の警察の活躍によってハッピーエンドで終わる救いのある展開になっている。
小説としてはこれでいいのだろうし、十分に面白いのだが、実際は絶対にこんなにうまくいくことはないだろう。

小説としては楽しめるものの、実際の事態を考えると暗くなる。
そういう意味では、本書は一流のシミュレーション小説なのかもしれない。

☆☆☆★(☆三つ半)

他のBlogの反応はこちら
(本書をポジティブに評価してるエントリ)
http://blogs.yahoo.co.jp/kiri_s_3103/24069347.html
http://blogs.yahoo.co.jp/momo_cat_star/30851291.html
http://readinglist.sblo.jp/article/26979654.html
http://blog.goo.ne.jp/orionisorionis/e/fc2f0bc1f1ca1c030faca47a5fde1051
http://blog.goo.ne.jp/hmd1190/e/7c27b445ac659fdca4ba0cff5540d21b
(本書をネガティブに評価してるエントリ)
http://s-ussy.blog.so-net.ne.jp/2009-02-19
どちらかというと、評価が高いエントリが多い。
私も本書は悪くないと思う。突き抜けて良いと言うこともないのだけど……





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