舞台は北へ。ひとまず転換。:極北クレイマー [小説]
「チーム・バチスタの栄光」シリーズの第5作目。
とは言っても、いつもの田口・白鳥コンビは登場しない。
他の作品とのリンクでは、白鳥の部下姫宮と、「ジェネラル・ルージュの凱旋」のラストで極北に飛ばされた速水と、「ブラックペアン1988」に登場した世良のその後が端役としてちょこっと描かれているぐらいだ。
本書は実際に発生した福島県立大野病院事件と夕張市の破綻をテーマに、医者を人間扱いしないで追い込んでばかりだと、最後は社会が損失を被るという主題で描かれている。
本書は、エンタテイメントとしてみると、十分に面白い部類に入る。
いつもの強烈なメンバーはいないけど、それなりに特徴のあるキャラクターと、テンポの良いストーリー。そして、実際の医者だからこそ書くことの出来るディテールが物語を支えているので、作品としては満足がいく水準だ。
海堂尊のファンで、今までの作品を読んだことのある人なら迷わず買いだろう。
逆に、筆者の主張には疑問が残る。
マスコミ・司法を中心に医療が追い込まれているのは事実だろうし、行き過ぎの部分があるのもまた正解。
それでも、筆者が懐かしむ昔に戻ることは医療分野に限らず不可能だ。
人口減少下で大きな負債を抱えた日本に、上り調子だった昭和の時代と同じような社会システム・人の心を期待することは現実的ではない。
ましてや、社会が医療につらく当たるのは官僚の陰謀だけではなく、(他の様々な業界と同じく)過去の医者のツケを払っている部分もあるのだから……。
と、最後にちょっと筆者の医療観に対する疑問は書いたが、それは作品の面白さには関係のない話。
作品として考えると、本書は十分にいけています。
☆☆☆★(☆三つ半)
他のBlogの反応はこちら
(本書をポジティブに評価するエントリ)
http://footstep.blog.shinobi.jp/Entry/2418/
http://blogs.yahoo.co.jp/unno1/31385145.html
http://hidebook.seesaa.net/article/146935773.html
http://plaza.rakuten.co.jp/ryujisato/diary/201005240001
http://ameblo.jp/to5ra/entry-10527131949.html
(本書を微妙な評価で描くエントリ)
http://xxxsoraxxx.blog11.fc2.com/blog-entry-898.html
総じて高めの評価。
今までの作品のキャラクターが端役で顔を出しつつ、新キャラも出てくる。
続きも気になるけど……。
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