SSブログ

グローバリゼーションには抗えない:華麗なる交易 ― 貿易は世界をどう変えたか [歴史]


華麗なる交易 ― 貿易は世界をどう変えたか

華麗なる交易 ― 貿易は世界をどう変えたか

  • 作者: ウィリアム・バーンスタイン
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2010/04/23
  • メディア: 単行本



古代ギリシア・ローマの時代から現代までの交易を描いた一冊。
通勤時間に読むと1週間以上かかるボリュームの多い本なのだが、読んでいて飽きたり、投げ出したくなったりすることのない非常に良質な一冊。

銃・病原菌・鉄―1万3000年にわたる人類史の謎」が人類の移動と文明の進化をテーマにしていたのに対し、本書は同じぐらいのスケールで交易をテーマに描ききっている。

【目次】
シュメール
貿易の海峡
ラクダ、香料、預言者
バグダッド―広東急行―一日五ディルハムで暮らすアジア
貿易の味と貿易の虜
貿易の病
ヴァスコ・ダ・ガマの衝動
取り囲まれた世界
会社の誕生
移植
自由貿易の勝利と悲劇
ヘンリー・ベッセマーが精錬したもの
崩壊
シアトルの戦い


――人間は取引をする本能がある。
――交易は戦争よりも儲かる。
こういった視点から、人類の交易を描いた一冊。

本書を読んで何より興味深かったのは、古代から現代まで一貫して、交易が活発になると国全体は富むが、競争力を失った産業に従事している人から政治的な圧力がかかって、保護主義が台頭してくると言うこと。
これは、いつの時代でも、どの国でも普遍的に見られる現象であり、日本の農民が特段強欲な訳ではない。

世界史の授業では米国独立の象徴的事件として習うことの多いボストン茶会事件も、とどのつまりは安い茶の輸入を阻もうとした茶業者の暴走だったという説が有力だと言うことだ。

本書を読むと、人間の本質は変わっておらず、
貿易を求めるという本能から、自由貿易に総論賛成で、自分の従事する産業が安い外国製品に押されるようになると保護主義を求める各論反対であることがよくわかる。

全体的には歴史の本だが、現代の貿易を考える上でも有益な一冊。
ボリューム・読み応えはあるが、それだけの価値は絶対にある。
銃・病原菌・鉄―1万3000年にわたる人類史の謎」が好きだった人なんかには、ヒットすること間違いなしだ。

☆☆☆☆☆(☆五つ。満点)

他のBlogの反応はこちら
(本書をポジティブに評価するエントリ)
http://boony.at.webry.info/201008/article_12.html

意外とエントリが少ない。
こんな良い本が厚さから敬遠されているなら非常にもったいない。





nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。