最後に勝ったのはどっちか:屍鬼 [小説]
「汝は人狼なりや」というゲームを知っているだろうか?
人間社会に紛れ込んだ物の怪を駆逐するゲームなのだが、実際にそうした事態が発生したらどうなるのかは、この小説が明らかにしている。
おそらく、人間も物の怪(屍鬼)も無事では済まない。
人間が勝ったとしても、失われるものはとてつもなく大きいのだ。
本書の特徴は、屍鬼という物の怪が一つの人格を持っているところ。
外国のB級ホラーでありがちな、飢えて人を襲うだけの存在ではなく、人間であった頃の記憶と人間としての価値観を保持していて、それがもとに個性と人格が形成されている。
この設定は以下にも日本人らしい設定だ。
そして、本書がすごいのは、楽観的な設定が無くあくまでリアルなところ。
正義のヒーローが何故かピンチになって、そして、都合良く生還する。そんな映画にありがちなシーンはなく、あくまでも人間臭く、実際におこるように動いていく。
そうした設定、ストーリー展開が読者に対して恐怖と哲学的思考をもたらしている。
このエントリでも書いたように、最初は夏はホラーだよね。といった程度で読み始めた本だったのだが、本書は掛け値なしにすごい。
ホラーファンは既に読んでいるだろうが、ヘタな純文学より人間について考えさせられるエンタテイメントである本書は、全ての人にオススメ。
私が思春期の頃に読んでいたら、自分の人生に強烈に残った一冊になってたんじゃないかな。
☆☆☆☆☆(☆五つ。満点!)
他のBlogの反応はこちら
http://ameblo.jp/chibaweblog/entry-10633346078.html
http://yomimono.jugem.jp/?eid=1344
http://blogs.yahoo.co.jp/nozoko23/51190211.html
http://blog.goo.ne.jp/momokomomo-2007/e/e9b604f7818f89aa345bcf914fc13729
漫画化、アニメ化されているようで、そっちのエントリの方が多く書評を探すのに一苦労。
10年も前の作品だもんね……。
でも、それが今アニメ化されて古びてないのは、本書のすごさを証明するものでしょう。
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