歴史物の皮を被った純文学志向:哄う合戦屋 [小説]
タイトル、表紙からも分かるように、戦国時代をテーマにした歴史物。
武田信玄・上杉謙信の争いが起こる前の信濃という、メジャーの周辺地域を舞台に、非実在と思われる武将が活躍するストーリー。
なのだが、他の歴史物と一線を画す風味がある。
私が本書を読んで違和感を感じたのは、本書が歴史物であり、歴史物のセオリーから行けば合戦の舞台で活躍する英雄豪傑や、戦争の影でたくましく生きる民衆・姫といったものにスポットライトが当てられることが多い。
特に戦国時代における歴史小説は英雄譚になることが多いので、本書もそうなるであろうと思って読み進めていた。
確かに、本書も一見すると戦国のヒーローを描いたストーリーにも見える。
ところが、最後まで読み進めて、本書の違和感がハッキリとした。
本書は、表面的には戦国の英雄譚でありながら、本質的には主人公の葛藤を描く方に力点が置かれた純文学的な要素を多く含んでいるのだ。
本書のラストシーンは「罪と罰」のラスコーリニコフが自首する場面や「赤と黒」のジュリアンが死を覚悟するシーンのような雰囲気を醸し出している。
もちろん、そんなに重たくもないし、文学の雰囲気に満ちあふれている訳でもないのだが……。
と、このように、最近よくある感じの表紙とテーマだが、読後の雰囲気は独特。
個人的には嫌いではないが、表紙買いした人の満足感を得られるかどうかは微妙なところかもしれない。
☆☆☆(☆三つ)
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おおむね高評価。
誰かも書いていたように、本書の主人公達はどことなく西洋風なんですよね。(南蛮かぶれという訳ではなく、考え方・行動等が現代人でも理解でき易いという点で)。
意外と若い人の方が違和感なくいけるのかも。
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