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ダメな指導者と活気ある国民:アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 [社会]


アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)

アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)

  • 作者: 松本 仁一
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2008/08
  • メディア: 新書



アフリカが発展するには国境を引き直す必要がある。
少なくとも、今のままではアフリカが先進国になる日などやってこない。
そんな絶望的な状況がよくわかる一冊。


【目次】
序章 アフリカの今―ルムンバの夢はどこへ行ったか
第1章 国を壊したのは誰か―ジンバブエで
第2章 危機に瀕する「安全」と「安心」―南アフリカ共和国で
第3章 アフリカの中国人―南アで、アンゴラで、スーダンで
第4章 国から逃げ出す人々―パリで、歌舞伎町で
第5章 「人々の自立」をめざして―農村で、都市スラムで
第6章 政府ではなく、人々に目を向ける―ケニアで、ウガンダで、セネガルで


ジンバブエは世界で有数の”恵まれた独立”をしながら、あっという間に高インフレに悩まされる絶望的な状況に陥ってしまった。
アパルトヘイトを克服し、黒人の指導者を持つようになった南アフリカも治安の悪化により、経済が伸び悩んでいる。
原油高に沸くナイジェリアも、オイルマネーを国の発展に全然結びつけられていない。

少数の例外はあるものの、アフリカは独立以来ひたすら貧しくなっている。
スピードの差こそあれ、確実に豊かになっているアジアとは全く逆の方向に向かっている。

その理由で最も大きな原因を占めるのは、アフリカ首脳の無能と汚職だ。
アフリカの政治家は、国を豊かにすることよりも、自分と自分の部族へ利益誘導することを優先する。
先進国の政治家でも私腹を肥やすものは存在する。が、アフリカではほとんどの政治家が公益よりも私益を優先するのだ。
そのため、援助はほとんど政府高官の懐に入り、資源高騰の利益を受けるのはごく少数の指導者層に限られてしまう。
このようにハッキリ言って、どうしようもない現実が本書では示されている。

アフリカが発展するには部族政治との決別が必須だが、旧植民地の国境線は部族と関係なく引かれているため、現実に部族政治から決別することは難しい。
本来的にはゼロベースで国境を引き直すべきなのだろうが、21世紀の現在そうした大変更も不可能。
本書を読んだ感想からは、アフリカの現状は手詰まり以外の何者でもないように見える。
アフリカが貧困を脱出するのは、当分先、というか、現状では無理だろう。

筆者は元朝日新聞の記者らしいが、新聞では出来ない深い洞察と、現地の詳細な情報が盛り込まれていて、新書ながらに読み応えは十分だ。

☆☆☆☆★(☆四つ半)

他のBlogの反応はこちら。

http://mietzsche.dtiblog.com/blog-entry-251.html
http://takuteku.blog.so-net.ne.jp/2010-02-25
http://book-guinness.seesaa.net/article/112053048.html
http://blog.goo.ne.jp/kunihiko_ouchi/e/306d11d3185b92d6b34ef917dc58619d
http://d.hatena.ne.jp/moto0215/20081118/1227016581
http://d.hatena.ne.jp/yoshihisa_yamada/20090415/1239787850

感想としては、先進国の責任を強調するものや、アフリカの自堕落を非難するもの、アフリカ人の活力に活路を見いだすものなど色々あるが、本書の評価は一様に高い。
今では珍しくなった骨のある新書でもある。





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