自由の重たさ、他人の重たさ:剣闘士スパルタクス [小説]
タイトルの通り、古代ローマを舞台に、圧倒的な実力を持つ剣闘士が奴隷の身分を抜け出すために蜂起した物語。歴史物にありがちな派手なシーンだけではなく、主人公の内面・戸惑いがよく伝わってくる好作品。
本書の見所は、武力では誰にも負けない主人公スパルタクスが、ただ単にローマ人に生まれたと言うだけで、剣も扱うことが出来ない人間から奴隷として扱われているところ。
ご存じのように、その状況に対してスパルタクスは反乱を起こし、結果として鎮圧されてしまう。
ここで、まず、読者は”強さ”とは何かを考えてしまう。
次に、反乱を起こし剣闘士養成所から脱走したスパルタクスは自由の身になったが故に、次に何をすればよいのかが分からなくなってしまう。
大学までは好成績だった学生が大学院に進んで何を研究したらよいかが分からなくなったり、社員として良い成績を上げていた人が管理職になって裁量の幅が出てきてもどうしたらよいか分からず自分で全部仕事をこなす様子にも通じる。
人間は自由を求めるが、いざ自由になったら戸惑う様子が非常にうまく描かれている。
そして、最後はスパルタクスにひ弱な脱走奴隷達が助けを求めるのだが、それを足手まといに思いつつも、彼らによって反乱軍のボスというアイデンティティを保つことが出来る。この奇妙な関係に悩むスパルタクスは、非常に人間臭く、魅力にあふれている。
これら3点の見所が、剣闘士の派手な戦闘シーンに彩られながら、テンポ良く進んでいく。
外国の歴史物なので、タイトルだけで敬遠する人も多いだろうが、手に取ってみると意外と面白く読める一冊だ。
☆☆☆★(☆三つ半)
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