人口万能教：デフレの正体 経済は「人口の波」で動く [経済]
デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
- 作者: 藻谷 浩介
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/06/10
- メディア: 新書
今の日本の不況を説明する本にはいくつか種類がある。
・マネー供給が少ないことを主要因とするもの（リフレ派）
・労働規制をはじめ、規制が多いことが成長率を下げているとするもの
・公共投資が足りないことを主要因とするもの
などなど。
本書は、それらとは違って、日本の労働人口が減少していることをデフレの主要因として、その立場から問題点の指摘と解決策の提示を行っている。
【目次】
思い込みの殻にヒビを入れよう
国際経済競争の勝者・日本
国際競争とは無関係に進む内需の不振
首都圏のジリ貧に気づかない「地域間格差」論の無意味
地方も大都市も等しく襲う「現役世代の減少」と「高齢者の激増」
「人口の波」が語る日本の過去半世紀、今後半世紀
「人口減少は生産性上昇で補える」という思い込みが対処を遅らせる
声高に叫ばれるピントのずれた処方箋たち
ではどうすればいいのか(1)高齢富裕層から若者への所得移転を
ではどうすればいいのか(2)女性の就労と経営参加を当たり前に
ではどうすればいいのか(3)労働者ではなく外国人観光客・短期定住客の受入を
高齢者の激増に対処するための「船中八策」
本書の内容を要約すると
・日本の不況、特に内需不況は労働者人口が減って、高齢者が増えたことによる
・高齢者はお金を持っていても、将来の医療・介護需要の先買いとしてお金をため込むので、お金が回らない
・解決策としては、高齢者から若者への富の移転を積極的に行うべき
と言うことになる。
加えて、”率”でものを考えるのではなく、”絶対数”を重視せよと言うことも繰り返し述べている。
個々で述べられていることに間違いはないのだが、全ての原因を労働力人口の減少だけに求めるのは無理がある。
普通の人なら、以下の疑問を思いつくだろう。
・労働力人口が減少しているのは日本だけではないのに、何故日本だけひどいデフレから脱却できないのか？
・筆者は会社が若年労働者の給与を上げて、消費者としての労働者にお金を回すように主張する。でも、そうすると消費者はコスト高の結果値段が高くなるシャープやソニーの製品ではなく、サムソンやLGの製品を買うのではないだろうか？
・「囚人ジレンマ」ではないけど、１社だけ抜け駆けして労働者の給与を削って製品価格を下げようとする会社が現れたとき、それに対抗できないのではないか？
このように、疑問はいっぱいだ。
筆者は、マクロ経済学の視点に疑問を呈して、経済学的視点を取り除いて説明しようとしているのだが、それが裏目に出て細かいところが説明し切れていないという印象はぬぐえない。
確かに、今の日本の不況に労働力人口の減少が一役買っていることは事実だろう。
というか、人口ボーナスに支えられた、バカでも経済成長できる環境が去ったと言うのが正しいかもしれない。
それでも、原因をその一点だけに求めるのはややピント外れだろう。
そして、不況脱出の解も、筆者が提案するもの計画経済の臭いがして好きには成れない。
今の日本経済を認識するに当たって、重要な視点ではあるが、やや誇張された一冊。
そんな感じだ。もちろん、読んでみて悪いものではないのだが、誇張が過ぎて全体の信用性を失っているように見えてしまう……。
☆☆☆★（☆三つ半）
他のBlogの反応はこちら
（本書をポジティブに評価するエントリ）
http://blogs.yahoo.co.jp/birst_head/60152251.html
http://sugar5030.blog98.fc2.com/blog-entry-212.html
http://www.pasteltown.com/akane/games/blog2/2010/12/post-404.html
http://blog.so-net.ne.jp/toramono/2010-11-28-1/trackback
http://blogs.yahoo.co.jp/x_men_go_go/27894374.html
（ニュートラルな評価のエントリ）
http://d.hatena.ne.jp/Adlestrop/20101212/p1
誰かが書いていたけど、三橋貴明に近い雰囲気を感じる。
あそこまで極端じゃないんだけど、何となく似ている。
たぶん語り口が近いんだろうなぁ……。
お久しぶりです。
デフレの正体のレビューを書き直したのでＴＢさせてもらいます。
この本、根本的に間違いだらけなんですよね。
by ＡＫＩ (2010-12-26 04:50)