歴史ファンにも読み応えたっぷり:「三国志」最高のリーダーは誰か [歴史]
タイトルと出版社から、以前にエントリを書いた「三国志で学ぶランチェスターの法則」と同じように、三国志は引用例だけのビジネス書だと思っていたが、意外と歴史に詳しくてびっくりした。
著者は中国古代史の学者らしい。
そういう本なので、歴史好き向けであり、ビジネス書向けではない点には注意が必要だろう。
【目次】
第1章 7タイプで分析する「軍師」の条件
戦国を生き抜いた軍師の智
三国志軍師タイプ1「股昿」
三国志軍師タイプ2「軍略家」 ほか
第2章 7タイプで分析する「武将」の条件
乱世を戦い抜いた「将」の条件
三国志武将タイプ1「飛将」
三国志武将タイプ2「猛将」 ほか
第3章 7タイプで分析する「君主」の条件
君主学とは何か
三国志君主タイプ1「暴君」
三国志君主タイプ2「庸君」 ほか
「三国志」で不思議だと思っていたのは諸葛孔明の評価の高さ。
”天下三分の計”では、魏に単独で対抗できないことを認めて長期戦を志向している。
それなのに、”出師の表”では単独で対魏戦を始めることを主張している。
この矛盾を抱えながら、何故か最高の軍師であると評価されている。
将棋や麻雀のヘボは、前の手と矛盾する後の手を指し、局面を悪くしていく。
私は、諸葛孔明とはそういった類の人だとしか思えなかったのだ。
そういったもやもやを抱えながら本書を読むと、諸葛孔明の人物像についての謎が解けた。
本書によると、諸葛孔明は儒教的価値観を唯一の信念とする知識人であり、決して名戦略家ではない。
この説明には、非常に説得力がある。
また、名士(知識人)と豪族と君主の関係も従来の三国志演義をベースとした小説等では分からない新たな視点である。
中央集権を志向する君主側の動きと封建的な分権を志向する名士の動きが対立しており、その対立関係が、三国志に表れる事件・自称を解き明かすためのキーになっていることが多いのだ。
この視点を持っていると、三国志が今まで以上に味わい深いものになることだろう。
ビジネス書ではなく、歴史の読み物としてお薦めの本書。紙面の関係で明らかに説明が端折られている箇所はあるが、三国志好きなら新たな視点で楽しめるはず。
☆☆☆☆(☆四つ)
他のBlogの反応はこちら
http://kazuenter.seesaa.net/article/161476857.html
あまり検索でエントリが引っかからない。
これはタイトルで損をしている部分があるかもしれない。
タイトル上手なダイヤモンド社にしてはしくじってると思うんだけど……。
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