時代物にも歴史有り:角兵衛獅子―鞍馬天狗傑作選〈1〉 [小説]
図書館の返却棚にあったので手に取ってみた一冊。
戦前の作家だけあって、今とは全く異なるイメージ。
時代物というと変化がないように思えるが、今のものとは明らかに異なるところが味わい深い。
本書が今の時代物と明らかに異なると思ったのは以下の2点。
1.文体が「~です」「~ます」調。
現在の小説では珍しい文体。とくに、本書の様な剣豪小説だと、明らかに違和感がある。
「鞍馬天狗は相手の刀をはたき落としたのです」と言った表現がばんばん出てくる。
おそらく、子供には紙芝居、大人には講談や無声映画と言った、声で語られる娯楽が一般的だった時代背景もあるのだろう。
声に出して読む方がしっくり来る文体なのだ。
2.敵の大将が近藤勇。
新撰組の長なのだから当然とも思えるのだが、現代の感覚からすると珍しい。
倒幕勢力のボスも西郷隆盛として描かれているところと併せて考えると、当時の読者の知識は今ほどではなかったのかもしれない。
「ダメなものは、タメになる テレビやゲームは頭を良くしている」でも書かれていたように、娯楽作品においても読者のニーズに応えるため内容はどんどん複雑化しており、それにキャッチアップする読者の知能は明らかに向上していくものなのだ。
おそらく、先の作品と違った味を出そうとしていろいろな娯楽作家が努力した結果、いろいろな登場人物に光が当たり、読者の知識も上がってきたのだろう。
歴史小説と言えばあまり代わり映えがしそうにないのに、今から見れば明らかに進歩している。
そういう意味では興味深い一冊である。
☆☆☆(☆三つ)
他のBlogの反応はこちら
http://blog.livedoor.jp/egoist777/archives/51358945.html
http://blog.goo.ne.jp/gavadon-g/e/7ca0f571bd1e561e3081065615db6424
エントリがあってびっくり。
ドラマでもやっていたようです。
コメント 0