こんな表紙に見つめられたら買ってしまうよね?:哲学する赤ちゃん [心理学]
ひとつ前のエントリでは、「乳幼児は他人の心が理解できない」ことが大嘘であることに触れた。
本書は、その「乳幼児の心」にフォーカスした一冊。
正直、ジャケ買いだったんだけど、内容は素晴らしい。
乳幼児の心を通じて、哲学・心理学の知識・好奇心が刺激される素晴らしい内容だ。
【目次】
第1章 可能世界―子どもはなぜ「ごっこ遊び」をするか?
第2章 空想の友だち―フィクションが伝える真実
第3章 プラトンの洞窟から逃れて―子ども、科学者、コンピュータはいかに真実を見出すのか?
第4章 赤ちゃんであるとはどのようなことか?
第5章 わたしは誰?―記憶、自己、流れゆく川
第6章 ヘラクレイトスの川とルーマニアの孤児―幼児期の体験とその影響
第7章 愛することを学ぶ―愛着と自己同一性
第8章 愛と法律―道徳の起源
第9章 赤ちゃんと人生の意味
赤ちゃんの仕事は、泣くこと・遊ぶこと。
大人と言葉を通じたコミュニケーションができないことから、古い学問の場では赤ちゃんは心も知能もない動物に近い存在として扱われていたようだ。
ところが、赤ちゃんができないのは言葉によるコミュニケーションぐらいで、脳は大人以上に多くの刺激を受け、大人以上に多くのものを学んでいることが分かってきている。
詳細な研究内容は本書を読んでもらうとして、個人的に本書を読んで気になったのは、「第8章 愛と法律―道徳の起源」について。
法学(特に刑法学まわり)では、方を犯すことはなぜ悪なのか?という議論をすることがある。
人間、社会が決めたルールを破るという契約違反を咎める社会契約論的立場や、人間である以上破ってはいけないルールがあるとする自然権的発想をする立場など様々な説がある。
でも、学生時代のオンボロ教室で聞いた法哲学の授業は、どうでもいいことを真剣に議論しているようにしか見えない、強烈なラリホーの呪文だった。
ところが、本書を読んで、面白いとも思わなかった法哲学の授業を思い出したのだから、不思議なものだ。
赤ちゃんのルールに対する考え方を通じて、大人の法哲学・倫理学へと知識はつながっていくのだ。
私は大学時代法律を学んでいたので、たまたまそこに素養があったのだが、他の研究についても赤ちゃんを通じて大人の哲学・心理学に繋がっているであろう本書。
値段は高いけど、ジャケットの可愛さと相まって、本棚においておくと引き締まること間違い無しの一冊だ。
☆☆☆☆(☆四つ)
他のBlogの反応はこちら。
http://doradick.blog108.fc2.com/blog-entry-758.html
http://newzy.jp/?p=2276
http://d.hatena.ne.jp/souichiro_iida/20110220/p1
http://agora-web.jp/archives/1120761.html
http://blog.livedoor.jp/fuyohchiryouin/archives/51729015.html
育児、哲学、心理学、社会制度……。
いろんな面から言及されている本書。よむひとによって、違った刺激をうけとれる素晴らしい一冊だと思います。
タグ:アリソン ゴプニック ☆☆☆☆
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