あっさり終わってしまった:楊令伝 15 天穹の章 [小説]
やっと終わった。その割に、終わり方は非常にあっさり。
小説を書く人はインタビューなどで「キャラクターが勝手に動く」とよく言っている。
本シリーズなどは、まさにその典型なのだろう。
キャラクターが勝手に動いて、私のような読者は置いてけぼりにされてしまった。
「水滸伝」の時は、最終19巻で全体を通じて賞賛のエントリを上げたほど、感動した。
もともと破綻しているストーリーを再構築して、魅力的なキャラクターで彩り、新たな作品と言っていいぐらいのクオリティに仕上げていた。だからこそ、続編の楊令伝には期待していたのだ。
だが、水滸伝というバックボーンを失ってしまうと、キャラクターの持ち味・魅力を活かそうとするばかりに、ストーリーが面白みを失っていく。
そういう意味では、ちょっと残念なシリーズであった。
以下は、第15巻の感想。
最初に思ったのは、
こんな終わり方をするのか。
という、半ば怒り。
夢オチに近い意味不明な終わり方だ。
「水滸伝」で、首領の宋江が死んだあとも、梁山泊のメンバーはそれぞれの思いで生き続けていたのに、楊令伝では首領の死と共にすべてが終わってしまう。
いつまでも連載を続けていくわけにはいかないのはわかるのだが、あまりにも唐突で納得感がない。
原作水滸伝は、最後にバタバタと人が死んで、108という数ありきで作った登場人物を持て余したことがありありと分かる構成になっている。
筆者の「水滸伝」シリーズでは、そうした無理をうまく解消したかに見えたのだが、やはり解消しきれずに楊令伝の最後でつけが全部回ってきてしまったような印象だ。
シリーズを続けて、超人を作ってきただけにこんな幕引きしか出来なかったのだろうか。
少年漫画ではありがちな、強さのインフレを続けた挙句にやめどきを失ってしまう作品。
本書もそうなってしまった感覚は否めない。
14巻まで読んだ人なら、最後まで読む価値はあるけど、シリーズに手を付けていない人には正直おすすめできない。
水滸伝でやめて、楊令伝は知らないほうが幸せになれる気がする。
☆☆(☆二つ)
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賛否両論。
次は岳飛伝らしいけど、この設定が続くなら個人的には手を出したくないですね。
リセットして、新たにチャレンジしたほうがいいものができるような気がします。
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