白熱教室の作り方:サンデル教授の対話術 [哲学]
「ハーバード白熱教室」で一躍有名になった、ハーバード大マイケル・サンデル教授の授業法に焦点を当てた一冊。
第一章、第二章がサンデル教授本人の授業法、教育に関する考え方についてのインタビュー。インタビュアーは千葉大の小林正弥教授だ。
そして、付論で小林教授がサンデル教授の授業法「対話型講義」についての解説を行っている。
あれだけの授業を行う人が、教授法について語った本なので、内容は非常に豊富であり、得るものの大きい一冊だ。
【目次】
第1部 サンデル教授、大いに語る―対話型講義をめぐって
自分自身のこと
対話型講義とはどのようなものか
講義法について
ハーバード大学の講義とその学生たち
東京大学での特別講義
日本とコミュニタリアニズム
アメリカと「市場の道徳的限界」
今日における正義と哲学
第2部 現代に甦るソクラテス的対話―サンデル教授から学ぶ講義術
大学に甦る対話篇・ハーバード白熱教室
サンデル教授の講義術
日本における対話型講義の技術
対話型講義による教育改革を
対話型講義の美徳―その実践に関心を持つ人々へ
付論 近現代的正義論から古典的正義論へ―新しい正義論への道
私は大学時代法学部であり、法哲学の単位も取得している。
ただ、法哲学の授業は単調で、あまり印象にのこるものではなかった。
そして、大学を卒業して社会人になり、10年以上の時間を経過してから、「ハーバード白熱教室」を見て感激と、後悔の念に囚われた。
このぐらいの授業が母校にもあれば、私の人生はより深いものになっていたかもしれないのに……。
こんな公開をする若い人を減らしたい。
本書の出版に協力し、解説も行っている小林教授はおそらく、そうした思いも持っていることだろう。
本書で語られる、「対話型講義」への熱い想いからは、日本の教育変革についての熱意が伝わってくる。
哲学はもちろんそうだが、私の学んだ法学・政治学も、一つの解が存在するという学問ではない。
そうした、唯一解が存在しない学問においては、本書で紹介されているような、議論を通じて理解と興味・知識を増やしていく「対話型講義」は非常に向いているように思われる。
もちろん、「対話型講義」も一過性のブームかもしれないのだが、今の教育が生徒に十分な満足感を与えているとは思えない状況で、現状を打破しうる一つの手段であることは間違い無いだろう。
「対話型講義」のテクニックと、サンデル教授の教育にかける思い。
この2つが詰まった本書は、教育関係者なら必読。
その他にも、企業で新人育成に携わる人にも有用であるなど、応用範囲は広い。
後輩・新人を育成する中堅サラリーマンにも読んで欲しい一冊である。
☆☆☆☆(☆4つ)
他のBlogの反応はこちら。
http://blog.livedoor.jp/ho_la_tengo/archives/52179196.html
http://blogs.yahoo.co.jp/hiromichit1013/62618916.html
http://matono.exblog.jp/16438607/
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http://www.ayumibooks.jp/2011/03/331.html
http://gyaxin.exblog.jp/15160040
ハーバードは世界一で別格なのかもしれないが、それにしても、世界第三の経済大国で、これだけの授業を望むのが難しいというのは、ひどい現状だと思う。
文部科学省はもっと批判されてもいいんじゃなかろうか?
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