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現場をよく知る人間の政策提言:国家破局カウントダウン 日本を救う三つの処方箋 [経済]


国家破局カウントダウン 日本を救う三つの処方箋

国家破局カウントダウン 日本を救う三つの処方箋

  • 作者: 上野泰也
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2011/05/06
  • メディア: 単行本



本書の特徴は
・学者ではなく、エコノミストが描いた本
・トンデモではない、まっとうな悲観論
というところにある。

人口減少から来るデフレを悲観する内容としては、ちょっと前に流行った「デフレの正体 経済は「人口の波」で動く」よりも読みやすくて、内容も正確だと思われる。

【目次】
プロローグ----日本は沈没しつつある

あなたが思う「日本の誇り」は何ですか?
"どん詰まりのゲーム"へ
危機はじわじわ忍び寄る

第1章 日本の現実を直視する

◆「暴落」ではなく真綿で首を絞められるように......
"余命"はあと五年前後か
「楽観論」に価値はない
「悪い金利上昇」の時代がやってくる
財政危機回避で重要な「従順なヒツジ」度合い
「プランB」で浮上しやすいのは所得増税
「頭でわかっても身体が動かない」消費増税
◆日本経済、三つの特徴
なぜ「円高はけしからん」か
デフレは生産年齢人口の減少とともに始まった
常態化した超低金利政策
このままでは、デフレ脱却は夢のまた夢
最後の"余裕"があるうちに
◆疲弊する地方
「夕張市」は全国にある
たとえ中核都市は栄えても、日本全体は沈む

第2章 民間活力はどこへ行った?

◆何が新陳代謝を阻害しているのか
企業の"延命"がかえって仇に
低金利化競争の揚げ句
◆日本経済の"ネック"としての銀行
銀行の能力が低下した理由
「泥船」に乗り続ける銀行
邦銀の海外進出にはいくつかのハードル
正念場は個人の資金が海外に逃げたとき
◆"逃げるが勝ち"の産業界
「氷上の白クマ」になった民間企業
農業の長期衰退を避ける道筋はあるか?
◆世代間格差に目を向けよ
「幸福ならお金はいらない」は本当か
高齢者が若者のためにできること
元凶は「一票の格差」
◆井の中の若者たち
就職のフロンティアは海外にある
なぜ若者は内にこもるのか
「こんなはずでは......」の四〇代

第3章 主要通貨から世界を概観する

◆腐ってもドル----米国経済はやがて復活する
円は「最弱通貨」になる
米国は「強いドル」を放棄したのか
ドルが基軸通貨であり続ける理由
「米国デフレ論」はナンセンスだ
当面は"療養"が必要
追加量的緩和という"危ない橋"と、「肉食系」の反応
「偽りの夜明け」に気をつけろ
米国民は「インフレ」を警戒している
◆構造問題を抱えるユーロ----それでも欧州の結束は固い
ギリシャ危機で露呈したユーロの脆さ
財政緊縮策は奏功するか
もし隣家が火事になったら......
◆円を"反面教師"とする人民元----米国の言いなりにはならず
「管理された通貨」のメリットと限界
少子化が暗い影を落とす
◆"最強"から"最弱"へ転落する円
一五年半ぶりの「超円高」の歴史的意義とは?
将来は「悪い円安」が深刻に

第4章 「こんまい」政策にだまされるな

◆経済財政に"奇策"なし
小手先を弄する愚
「ヘリコプターマネー」の弊害
「インフレターゲット論」は何を見誤っているのか
◆「空気」に流されていないか
為替介入が実施された理由
タブーを破った日銀の「包括緩和」
日銀の規律は緩んでいる
「一発逆転」に期待をかけ続けて二〇年
◆漂流する民主党政権
「事業仕分け」は余裕を使い切る"儀式"のようなもの
「政権交代しても何も変わらない」というショック
「子ども手当」は成果を検証せよ
「成長戦略」の文書づくりは無意味だ
◆税制論議に欠けている視点
消費税増税の前にやるべきことがある
法人税の減税効果は小さい
◆日本国債格下げでS&Pが指摘した三つのポイント
日本国債の格下げに動いたS&P
後で振り返ってみると「転換点」?

第5章 "変身"せよ、日本

◆浮沈のカギは「滞在人口」にあり
仮面ライダーに見る「元気だった日本」
デフレを止める三つの方法
◆子育てしやすい環境をつくる
「待機児童ゼロ」では解決しない
会社内に託児所の設置を
◆「観光立国」を目指せ
外国人観光客は、すべて"上客"
観光客六人分は日本人一人分の年間消費額に匹敵
観光客受け入れ態勢を整えよ
外国人に日本の観光戦略を練らせてみては?
"白鵬"を呼び込め
◆移民は怖くない
移民を送り出す時代から迎える時代へ
移民にとって日本は住みよい
なぜオーストラリア経済は堅調なのか
英国を見習え
◆大震災の中から日本は何を見いだすのか
日本という国家の「トータルな危機」
原子力発電所事故海外が意識した日本の「カントリーリスク」
飛び出した「震災復興国債」日銀引き受け報道
英知と努力を結集してピンチをチャンスに変える

エピローグ----「初期設定モード」を日本人は変えられるか?

日本人の「初期設定モード」は、しがみつくこと
マスコミによる「円高狂騒曲」報道の裏側
自分自身で理解し、判断したいという欲求


本書の議論は、少子高齢化・人口減少をデフレの原因とした上で、日本経済は内需というエンジンが恒久的に弱くなっていくのだから、潜在成長力は低い状態にあるという認識からスタートする。
そして、日本が意味のない政策をめぐる足の引っ張り合いで時間を浪費している現状と、日本を取りまく世界経済の状況を解説した上で、政策提言を行なっている。
タイトルの「国家破局カウントダウン」は少子高齢化で経済が伸びず、貯蓄の取り崩しも想定される中、家計マネーが国債を買い支えるには限界があるという当たり前の予測をセンセーショナルに取り上げたものだ。

本書の特徴は、学者ではなく、民間金融機関勤務のエコノミストが書いているため、学術的な議論ではなく実体経済に即した議論がされているところ。
そのため、理論的には大雑把に見えるが、内容は非常に理解しやすい。

今の日本でビジネスをする人は、どれだけ頑張ってもビジネスが伸びていかないことに疲れているだろう。
だが、それも人口の大半を高齢者が占めるようになってきている上に、総人口も減少に転じている以上、仕方のない事でもある。
人口減少が原因である以上、政策はすべてそこに効くものでなくてはいけないのに、消費税増税による(老人に手厚い)社会保障の維持や円高対策の市場介入と言った意味のない政策で時間を浪費していることが非常に歯がゆい。

ただ、高齢者が票というパワーを持つ現在の政治体制や、マスコミの受けて・送り手共に高齢化してしまっている現状を見ると、今の状況はなかなか変わりそうにない。

ベースが悲観論なので、読んでいて暗い気持ちになるが、今の日本が抱える問題は非常によくわかる。
エコノミストの描いた本としてはまともな方なので、賞味期限が切れないうちならオススメできる一冊だ。

☆☆☆☆(☆4つ)

他のBlogの反応はこちら。
http://pub.ne.jp/YoshiYasu/?entry_id=3893284
http://tamahibi.blog122.fc2.com/blog-entry-650.html

エントリは少なめ。
この筆者はエコノミストとしては信頼出来る部類だと思うのだが、それだけにトンデモ本の筆者と比べると地味なのかな?

経済と医療の分野はまっとうな人はまっとうであるがゆえに目立たず、トンデモ理論の人のほうが事実を花から無視しているだけに万能感があって目立つという弊害があるような……。







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