読んだ後でも違和感が残る:組織行動セーフティマネジメント―「仕組み」でリスクを回避せよ [その他]
組織行動セーフティマネジメント―「仕組み」でリスクを回避せよ
- 作者: 石田 淳
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2011/02/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
組織の安全管理に関する管理手法を示した本。
安全管理であれば、コンプライアンスだろうと、物理的な安全管理だろうと、情報セキュリティだろうとひっくるめて対象にしている。
が、私はいまいち本書に感心しなかった。
その理由3つは以下で。
【目次】
第1章 これからの企業生命を決定づける「セーフティ」とは―悪気のないたった一つの行動が組織を滅ぼす
(見えないだけで、いつも目の前にある危機、世紀の変わり目にアメリカで何が起きていたのか ほか)
第2章 なぜ「危険行動」は起こるのか―誰にも見えていない真実を掘り下げる
(企業から危険行動がなくならない人間心理、危険行動は果実を伴う ほか)
第3章 「行動へのフォーカス」が可能にする組織のセーフティ―組織行動セーフティマネジメントの基本原理
(態度より行動に着目すること、セーフティは「意識」ではつくれない ほか)
第4章 「組織行動セーフティマネジメント」を実践しよう!―すぐにできる、具体的仕組みと動き方
(組織行動セーフティマネジメントを行う大前提、組織行動セーフティマネジメントの具体的手法)
まず、本書で述べられているのは、おおきく
①安全は企業の存続に関わるので、何よりも優先するということ。
②安全対策はなるべく人に頼るのではなく、機械的・仕組み的な対策を講じること。
③対策にあたっては心理学的なアプローチを重視し、実効的な対策を行うこと。
という3つだ。(詳細についてはパラパラとでも読んでみてください)
まず、①についてだが、私はこの考え方が個人的に大嫌いだ。
私も昔は情報セキュリティに携わっていたことがあるから、リスク管理部門の人が買う言いたくなる気持ちもわかるし、頻繁に目にするセリフでもある。
だが、それは事故に合わない様に家にとじこもっているようなもので、本末転倒だろう。
利益重視で活動しても事故を起こさないような利益部門優先の対策こそがあるべきだと思う。
次に、②についてだが、これはあえて言うまでもない常識。
筆者は物理的な安全衛生管理がメインのような書きぶりだったが、その世界ではあまり一般的ではないのだろうか?少なくとも情報セキュリティの世界では人よりも機会に頼った対策のほうが信頼性が高いというのは常識で、新鮮味がなかった。
最後に、本書の一番の売りである③。
心理学・行動科学に基づいた対策を実施するべき。というのはそうなのだろう。
だが、本書で書かれている内容がなんとも煮え切らないため、いまいち信頼性と現実感を持つことが出来ない。
例えば、本書で出てくる「PST分析」というのがあるのだが、この「PST」は「P=Positive」、「S=即時」、「T=確か」の略称らしい。このように日本語と英語が混じったオリジナルの略称が出てくる内容をすんなりと信じることができるだろうか?
他にも、興味深い具体例の断片は語られるのだが、具体例の実戦的な部分が出てこずに、「米国ADI社のBBS理論を元に……」とさわりにとどまっているのも不満。筆者のビジネスのさわりを紹介し、詳細はコンサルにつなげるツールと考えれば仕方がないとも言えるが……。
このように、私にとってはやや残念な一冊であった。
だが、安全管理の基本的な考え方は学べるので、安全管理の担当に任命されたが右も左も分からないという人は読んでみると役立つだろう。
☆☆(☆2つ)
他のBlogの反応はこちら。
http://blog.goo.ne.jp/suke03_tam24/e/2c7792ad0687d5734495655e2023c5d4
http://korogaruishi.blog23.fc2.com/blog-entry-1047.html
エントリは少なめだが、いずれも高評価。
私のような反応はむしろ珍しい
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