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江戸時代の経済活動を垣間見る:江戸のお金の物語 [歴史]


江戸のお金の物語 (日経プレミアシリーズ)

江戸のお金の物語 (日経プレミアシリーズ)

  • 作者: 鈴木 浩三
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2011/03/09
  • メディア: 新書



江戸時代をお金という切り口から整理し、
通貨制度、経済政策、商人のビジネスなどを一冊にまとめたのが本書。

江戸時代のお金にまつわるエピソードがいっぱいで、知らない人が見れば、非常に興味深く読むことができるだろう。

【目次】
序章 江戸時代はお金の時代
第1章 複雑だった江戸時代のお金―金・銀・銭の三貨幣
第2章 町人のお金の稼ぎ方・使い方
第3章 お金に追いまくられる武士
第4章 お金と貿易・お金の改鋳
第5章 明治になって


本書は、お金の面から江戸時代における様々なエピソードを描いている。

本書に書かれた事実は非常に興味深いものが多い。
例えば、世界最古の先物取引市場が大阪の堂島で行われていたこと。
金・銀・銭(銅、鉄、真鍮)がそれぞれ別個の基準で流通しており、それぞれに市場レートが存在したこと。
お金がお金を生むのは当たり前のことで、余った資本は積極的に投資に回されていたこと。
江戸時代の銭の出来はよく、寛永通宝は昭和まで使うことができたこと(実際に使われていたのはほとんど明治時代まで)。

このように、時代劇をよく見る人でも意外に知らないと思われることが多く、エピソード集としては非常に楽しんで読むことができる。

そんな本書に会えてケチを付けるなら、筆者の経済感がやや統制経済よりなところ。
筆者も儒教的価値観で市場を締め付けるような政策は批判しており、松平定信をヒーローとして描く教科書よりはマシな感覚を持っている。
だが、株仲間(同業者組合)を通じた経済政策を賞賛する一方で、自由化を批判していることは疑問が残る。

筆者の価値観は、言うなれば、「三丁目の夕日」に戻ろうというほどトンチンカンではないが、「官僚たちの夏」は肯定的に捉えるような見方であり、民間商人の活力を心底からは信じていないような印象を受ける。

と、物の見方には違いはあれど、本書に書かれたエピソードは知らない人にとっては非常に興味深いものであることは間違いない。
経済に興味のある人だけでなく、江戸時代劇のファンでも楽しめるのではなかろうか。

☆☆☆(☆3つ)

他のBlogの反応はこちら。
http://blog.goo.ne.jp/shinshindoh/e/b958f599aabcb910056b2c7959c50669
http://juneh.exblog.jp/14247387
http://d.hatena.ne.jp/deku_dec/20110324/1300893099
http://okanejuku.blog92.fc2.com/blog-entry-993.html

本書はエピソードが豊富に紹介されているので、それぞれのエントリで触れられているエピソードは異なります。
本書を見ると、利殖については考えず銀行預金を第一義とする昭和的価値観が日本の伝統からかけ離れていることがよくわかります。






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コメント 1

june_h

TBありがとうございます。江戸時代の経済のしくみと経済政策が結構複雑だったので驚きました。
by june_h (2012-08-22 12:46) 

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