データを使って都合の良い主張をしている……。:実は世界No.1の日本経済 [経済]
ニッポンを評価する書物なら本書よりも「なぜ日本経済は世界最強と言われるのか」の方を薦める。
本書は、言いたいことはわかるけど、細かな部分に誤りや賛同できない主張が多くて素直に日本経済がすごいと思えないのが残念だ。
【目次】
第1章 世界一のお金持ち・ニッポン
第2章 人口減少と社会保障
第3章 増税の前にすべきこと
第4章 日本国債は危険?安全?
第5章 デフォルメされたギリシア情報
第6章 米国大統領選とバブル
第7章 中国経済と人民元
本書の中で、日本財政を語った第1章、第4章あたりは非常にまとも。
日本経済が今すぐ破綻するような一部マスコミへの反論として、非情にオーソドックスでわかりやすく書かれている。この部分は全く問題ない。
だが、第2章の社会保障については、
現在の年金制度では、1980年生まれ以降2010年に生まれた人でも年金給付の総額は、厚生年金は納めた保険料の2.3倍、国民年金でも1.5倍になると言われています。
と語りながら
厚生年金の給付が良い理由は、労使折半と言って、勤労者が納付する保険料と同じ額だけ企業も納付するので、勤労者が支払った実質額よりも上乗せされていること、そして年金積立金のうち半分に税金が投入されていることが挙げられます。
と言ったお笑いのような理由が出てきている。
つまり、筆者は労使折半の企業負担分が実質的に給与と等しいことが理解できていない。
具体例を出すと、月給30万円の労働者の厚生年金負担が2万円の場合、筆者は2万円の積立額の合計だけを見て2.3倍と言っている。当然これは誤りで、この例で上げた労働者の給与は本来なら32万円で、社会保障制度が労使折半になっているため企業は先に2万円を国庫に納付してから、残りを給与として支払っているに過ぎないのだ。
この理解で日本の社会保障制度はどの世代にとってもお得と論じているのだから、話にならない。
また、第3章の主張の中には、「株主に配当するよりも労働者に分配すべき。」と共産主義的な主張が堂々と述べられている。筆者は株主軽視を加速して日本に対する投資が減ってもいいと思っているのだろうか?
さらには、米国経済を語った第6章でも、根拠として「チャート」が挙げられていて信頼性が損なわれる。
このように細部でいまいち信頼出来ないので、全体としての主張も正しいと思えなくなる。
日本経済を称賛する本なら他にもいっぱいあるので、本書にこだわることはないだろう。
☆☆(☆2つ)
他のBlogの反応はこちら。
http://manekineco.seesaa.net/article/314035437.html
http://blog.livedoor.jp/minematesmansion/archives/6004891.html
評判はいいようです。
日本を擁護する論調は少数派なので、目立ちはするんでしょうが……。
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