SSブログ

日本の中の狩猟文化:古代蝦夷の英雄時代 [歴史]


古代蝦夷の英雄時代 (平凡社ライブラリー)

古代蝦夷の英雄時代 (平凡社ライブラリー)

  • 作者: 工藤 雅樹
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2005/10/11
  • メディア: 単行本



ここ2回続けている、古代~中世日本の歴史に関する読書。
京都の摂関政治、坂東の武士と見てきて、今回は東北・北海道の蝦夷。教科書では坂上田村麻呂ぐらいしか出てこないのだが、本書を読めば更に興味深い事実が出てくる。

【目次】
第1章 蝦夷アイヌ説と蝦夷日本人説をめぐって
 新井白石、本居宣長など、江戸時代の蝦夷アイヌ説
 石器時代人コロボックル説 ほか
第2章 「エミシ」から「エゾ」へ
 「エミシ」と「エゾ」
 「エミシ」がひろく東国人を意味した時期―第一段階 ほか
第3章 北日本の古代文化
 縄文文化
 縄文文化以後 ほか
第4章 蝦夷の社会構造
 族長層の出現と末期古墳
 古代蝦夷の「~村」 ほか
第5章 英雄の後裔
 前九年の合戦
 清原氏 ほか


前回のエントリで奥州を地盤とする陸奥守は軍事力を増強するには欠かせない絶好のポジションであることがわかった。
その理由は馬・鷲の羽と言った武具の原材料を産出するという理由の他に、蝦夷という強大な武力の存在があげられる。
その強大な武力を部下・傭兵として直接的に軍事力を高めることもできるし、征伐の対象としつつ軍隊の練度を上げながら名声を得るというルートもとることが出来る。

と、ここまでが中央から見た東北の位置づけ。
では、東北の側はどのように朝廷と関わってきたのか?というのが本書で分かる内容だ。

まず、少し考えればわかることなのだが、地球が寒冷だった時代には東北・北海道では稲作が難しい。そのため、西日本を中心とした地域が縄文時代から稲作中心の弥生時代に移っても、北海道・東北北部は狩猟・漁労が中心の続縄文時代が続くことになる。言わば、地域的に狩猟民族が残ったような形になるのだ。

そのため、強大な力を持ったリーダーは出にくくなるが、個々の武力は高い状態が保たれる。まるで、中国の王朝と北方騎馬民族のような関係が、大和朝廷と蝦夷の間にも成立したのだ。
蝦夷の側から見ると、大和朝廷は強大な兵力と文化を持った存在であり、交易したり体勢に取り込まれたり時には略奪したり。そんな関係を本書から読み取ることが出来る。

中国の騎馬民族とは異なり、我が国においては最終的に取り込まれることになった蝦夷だが、本書はその知られざる歴史を垣間見せてくれる。

☆☆☆★(☆3つ半)

他のBlogの反応はこちら。
http://jomon-heritage.org/blog/books/380
http://www.villagewood.net/blog/archives/000528.html
http://anthropology.blog.ocn.ne.jp/archaeology/2010/06/post_28cf.html
http://d.hatena.ne.jp/u1-5300/20070515

本書を読むと蝦夷は一時期、源氏を圧倒する武力を持っていたことがよく分かる。その後の義経・頼朝と奥州藤原氏の関係を一気に理解することができる内容だ。






nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。