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サンデルのファンブック?:サンデルの政治哲学-<正義>とは何か [哲学]


サンデルの政治哲学-<正義>とは何か (平凡社新書)

サンデルの政治哲学-<正義>とは何か (平凡社新書)

  • 作者: 小林 正弥
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2010/12/11
  • メディア: 新書



マイケル・サンデルの著作を通じて、彼の思想をわかりやすく解説した入門書。「これからの「正義」の話をしよう」や、「ハーバード白熱教室講義録」に於いてマイケル・サンデルはあえて自分の思想を強く出していない。
大ヒットしたサンデルの著作を読んで、彼の考える答えはどこに有るのだろう?と疑問に思った人が読むに最適な入門書兼ファンブックである。

【目次】
はじめに マイケル・サンデルの政治哲学の全体像

序 新しい「知」と「美徳」の時代へ
──なぜ、このような大反響となったのか

第一講 「ハーバード講義」の思想的エッセンス
──『正義』の探求のために

第1章(第1回) 三つの正義観──「正しいことをする」
第2章(第2回) 功利主義の福利型正義論──「最大幸福原理」
第3章(第3回) リバタリアニズムの自由型正義論──「私たちは私たちのものか?」
第4章(第5回) 市場主義にさらされる道徳──「雇われ助っ人」
第5章(第6・7回) 道徳的哲学者、カント──「重要なのは動機」
第6章(第7・8回) ロールズの自由型正義論──「平等のための理由」
第7章(第9回) リベラリズムの不条理──「アファーマティブ・アクションを議論する」
第8章(第9・10回) 正義論の古典的源泉、アリストテレス──「誰が何に値するか?」
第9章(第11回) コミュニタリアニズムと忠誠のジレンマ──「たがいに負うものは何か?」
第10章(第12回) サンデルの理想──「正義と共通善」

第二講 ロールズの魔術を解く ──『リベラリズムと正義の限界』の解読

ロールズの『正義論』とは
〈正義の首位性〉を批判する
序 章 形而上学なき正義論──「リベラリズムと正義の首位性」
第1章 ロールズの考えている自己とは──「正義と道徳主体」
第2章 所得は道徳的価値と無関係か?──「所有・適価・分配の正義」
第3章 〈契約〉の正体は原理の発見──「契約論と正当化」
第4章 本当の〈コミュニティ〉や〈善〉とは──「正義と善」
結 論 〈負荷ありし自己〉の友情と省察──「リベラリズムと正義の限界」
コミュニタリアニズムの出発
〈第二講〉 まとめ

第三講 共和主義の再生を目指して──『民主政の不満』のアメリカ史像

第1部 「手続き的共和国の憲法」──共和主義的憲政史
第1章 〈ロールズ 対 サンデル〉の第二ラウンド──「現代リベラリズムの公共哲学」
第2章 建国の頃は権利中心ではなかった──「権利と中立的国家」
第3章 中立性の論理で失われたもの──「宗教的自由と言論の自由」
第4章 性的関係や家族関係をどう考えるか──「プライバシー権と家族法」

第2部 「公民性の政治経済」──共和主義的政治経済史
第5章 共和主義的産業を求めて──「初期共和国における経済と美徳」
第6章 共和主義的な二つの運動──「自由労働と賃労働」
第7章 二つの革新主義──「コミュニティ、自己統治、革新主義的改革」
第8章 〈善なき経済学〉の勝利──「リベラリズムとケインズ革命」

第9章 〈不満〉の克服への試行錯誤──「手続き的共和国の勝利と苦悩」
結 論 新しい共和主義のビジョン──「公共哲学を求めて」
共和主義はいかに生まれ変わるか

第四講 「遺伝子工学による人間改造」反対論 ──『完成に反対する理由』の生命倫理


マイケル・サンデルの考え方は一般には「コミュニタリアニズム」であるといわれる。では、「コミュニタリアニズム」とは何か?この考えを簡単に説明するのは、実は難しい。
政治哲学の立場では、功利主義やリバタリアニズムは説明が簡単だし、もう少し説明の難しいリベラリズムも実際の政治家で”リベラル”を自称する人が多いことからも何となくは理解できる。それらに比べて、「コミュニタリアニズム」は日本でそうした立場の人が少ないことなどから非常に理解し難い。

本書は、そのように日本人に馴染みの薄い「コミュニタリアニズム」の代表的論者であるサンデルの思想をわかりやすく解説している。彼の代表的著作を通じて、その考え方を明らかにするとともに、ジョン・ロールズへの批判を通じてリベラリズム・リバタリアニズムとの違いも際立たせている。

多くの人がまずは手に取るサンデルの著作である「これからの「正義」の話をしよう」や、「ハーバード白熱教室講義録」の続きで読むには最適の一冊であるといえる。

もちろん、本書には問題点もある。
本書は、サンデルの思想を解説するための一冊で、彼の考えに寄り添った作りになっている。そのため、批判される側であるリベラリズムやリバタリアニズムの立場からするとややざっくりした書き方で済まされてしまっている。

それでも、スペースが限られた新書という形態の中では、誠実で誤解の少ない書き方はされていると思うし、本書を読んで次へのステップアップにするにはピッタリの作り。
私個人はサンデルの考えには欠陥があると思っているが、そんな私でも違和感なく、新しい知識を得ながら読むことが出来る。古き良き新書の系譜に連なる良書といっていいだろう。

☆☆☆☆☆(☆5つ。満点)

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