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20代~30代前半がキャリアに占める割合が大きすぎる。 [opinion]

人生設計考えて…妊娠いつする? 10代から「女性手帳」導入へ
産経新聞 5月5日(日)7時55分配信
人生設計考えて…妊娠いつする? 10代から「女性手帳」導入へ
 政府が、女性を対象に10代から身体のメカニズムや将来設計について啓発する「女性手帳」(仮称)の導入を検討していることが4日、分かった。(後略)


色々な所で波紋を呼んでいる女性手帳の問題。
今更女性に出産のタイムリミットを意識させる必要があるのか?とか、啓発すべきはむしろ男性じゃないのか?とか、色々批判を読んでいるけど、私もこの施策は意味が無いと思う。

なぜなら、手帳をもらっても人生設計をまともに考えるほど、適齢期での出産・子育ては難しいから。
(唯一の例外は女性が一回り上の男性と結婚して、専業主婦になるパターン)

私は外資系とかベンチャー企業の実態は知らないが、この国の雇用の多くを占めている日本企業では20代前半~30代前半の時期がキャリアに占める割合が大きすぎる。そこでの遅れがキャリアに致命的な傷をつけるような構造になってしまっているから、働く女性は出産に踏み切れないし、男性も子供を持つ気になれない(ましてや、育児休暇なんてとてもじゃないけど取れない)のだと思う。


今の日本における正規雇用の多くは、職務定義を曖昧にした雇用。そのため、大学時代に習得した知識でそのまま働くことが出来るのは稀で、多くは入社後3年~5年(企業によってはもっと長く)かけてスタートラインに立つような構造になっている。その期間に妊娠・出産・子育てといった理由で長期間仕事を休むと見習期間が伸びてしまう。

管理職やその一歩手前ぐらいまできていると、少々の遅れは自分の働きで取り戻せたりするのだが、入社後すぐの遅れはそれをリカバーするような業務が与えられることはないので、取り戻しが効かない。人生設計をまともに考えるとこの期間は妊娠・出産をためらってしまう。ちなみに、大学院まで行った人なら、この期間を過ごすだけで30歳になってしまう。

それでも、いわゆる上記見習期間が終わった直後で妊娠・出産に踏み切れば30前後で初産。これなら間に合っているようにみえるのだが、見習期間が終わって会社の流儀がわかってきたらすぐに妊娠・出産できるか?と言うとこれもまた難しい場合が多い。

出世を諦めてキャリアを一生平社員でいいと割り切れば可能なのだろうが、今の日本型雇用の多くは入社時の立場は平等で、その後の働きと業績と社内政治で出世が決まるようになっている。昔は民間企業でも所謂1種・2種とか幹部候補・兵隊候補とか言葉は色々あれど、スタートラインが違っていたらしいのだが、今はスタートラインの差は小さくなり、ほぼ平等な競争が行われることになっている。

これは平等という意味ではいいことなのだろうが、どんな人にも昇進の希望がある上にアドバンテージを持っている人も居ないから、ある程度先が見えるまでは妊娠・出産でキャリアに穴を開けづらい構造になっている。昔のように入社時に一定程度先が見えたらそれを受け入れた人生設計で早めの出産も可能となるのだろうが、もはやそんな時代ではない。
昔はキャリア形成に重要な時期が20代~30代前半と18歳・19歳の時に分散していたが、今は20代~30代前半に集中してしまっているのではなかろうか。

余談になるが、この例外はキャリア以外の公務員。この人達は一定程度先が見えているので、それを踏まえた早めの出産も可能だと思う。

政府は「30半ば~後半で子供が欲しくなったが妊娠が難しくなった」という問題に対処するために「女性手帳」を考えているのだろうけど、多くの人がすでに指摘しているように、知らなかったからその時期まで何もしなかったわけじゃないと思う。
むしろ、真剣にキャリアと子育ての両立を考えたからこそ、その時期まで子供を持つ決心ができなかったのではないだろうか。これは(同世代の人と結婚すると仮定した場合)男女とも同じ問題を持つ。私の務める企業は男性の育児休職制度もあるが、ごくごくわずかにその制度を使う人は、管理職になって第二子以降を出産した妻のサポートという場合が多いように感じる。

欧米型の職務定義書による雇用を推進することだけが唯一の解といえるかは不明だが、キャリアと子供の有る家庭を両立させる人生設計をまともに考えれば考えるほど、20代~30代前半は休めない。という問題を政府の人には認識して貰いたいものだ。

ちなみに、上記の議論は高卒での就職や非正規雇用には当てはまらないと思うのだが、高卒での就職はその対象自体が少なくなってきているし、非正規雇用は出産・子育てに十分な給与や保証が与えられないケースが多いという別の大きな問題をはらんでいる。

どっちにしても、子供を持つことを前提とした労働環境の整備こそが重要だという結論に変わりはない。






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