溝口敦の無駄遣い?:抗争 [社会]
暗黒勢力取材の第一人者が暴力団抗争の歴史を描いた内容。
戦後暴力団の歴史と、それを通じてわかる彼らの行動原理がよくまとまっている。
【目次】
第1部 暴力団の戦後史
山口組三代目・田岡一雄 全国制覇と殺しの系譜
大阪戦争―組長を撃った男・鳴海清の最期
山口組四代目・竹中正久暗殺現場の壮絶
四代目暗殺に怒涛の報復「山一抗争」の結末
宅見勝・山口組若頭の命はなぜ狙われたか
住吉会幹部射殺と國粋会会長・工藤和義自死の連関
第2部 実録ヤクザ外伝
広島抗争「仁義なき戦い」の赤裸な実像
凄惨な仲間殺しが繰り返された沖縄抗争
双方のトップが凶弾に倒れた北見抗争
名古屋抗争で中京統一を果たす弘道会・司忍の肉声
残忍な仇討ちを重ねる九州抗争はなお続く
本書は暴力団の歴史をまとめた内容なので、必然的に実話系週刊誌のような大物ヤクザの列伝になる。
アンダーグラウンド取材歴の長い筆者からしてみれば至極一般的で常識の範疇に入るような内容なのだろうが、そうした業界に縁のない一般読者からしてみると、刺激的でショッキングな内容だ。
そして、そうした異世界の住人の行動を通じて、彼らの評価基準や行動原理を垣間見ることが出来る。
新書としての本書の意義はその一点にあるといえる。
ただ、本書は徹頭徹尾暴力団の歴史なので、「続・暴力団」のように第一人者である筆者ならではの視点を読み取ることは難しい。
ヤクザ業界の御用ライターではない分、組織の宣伝に成り下がっていないのは評価できるのだが、筆者の使い道としてはやや物足りない。
ヤクザの歴史を知りたい人や、ヤクザ映画の好きな方、小説の資料などには向いているのかもしれないが……。
☆☆☆(☆3つ)
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