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考え方の根本が異なる相手との交渉:秘録・日韓1兆円資金 [歴史]


秘録・日韓1兆円資金

秘録・日韓1兆円資金

  • 作者: 小倉 和夫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/01/24
  • メディア: 単行本



全斗煥・鈴木善幸の時代を中心とした、日韓関係の回想録。
今から思うと隔世の感があるが、外交に携わるものがどういう思いで日韓関係を考えていたのかがよく分かる良書である。

【目次】
第一章 軍事政権の要求
第二章 韓国の傲岸不遜
第三章 外相たちの「哲学」
第四章 韓国の「克日」
第五章 瀬島龍三と全斗煥
第六章 偽造された親書
第七章 「最終案」の行方
第八章 親日と反日のはざまで
第九章 ニューヨーク会談で見えた薄光
第一〇章 瀬島龍三の裏工作
終 章 終幕――ソウルの初雪


本書は朴正熙が暗殺され、韓国が全斗煥の軍事独裁に切り替わった時期に、韓国から日本に100億ドルの資金援助の話が舞い込むことから始まる。
全斗煥政権の誕生は、軍事独裁政権の誕生であり、かつ、李承晩時代に反日教育を受けた世代が政権の中枢に進出してきた時代とも重なり、かつての日韓関係の常識が通じなくなった時代の始まりでもあった。

とは言え、時代は冷戦のまっただ中であり、北朝鮮・中国・ソ連に対して資本主義陣営として日韓はともに立ち向かう運命にあった。そうした背景の中で、一種無茶とも言える韓国側の要求をどのようにして叶え、疎遠になっていた日韓関係を近づけていくのか。そうした難題に挑んだ日本の政治家・外交官の姿が本書では描かれている。

私のように東京五輪は知らないが、ソウル五輪でのカール・ルイス対ベン・ジョンソンの対決はおぼろげながらに覚えているような世代にとっては、本書で語られる日本の対応は原則を外した弱腰の対応であり、日本の国益をおおきく損なっているようにみえるのだが、当時の常識はおそらく違ったのだろう。
そして、そうした世代ギャップが当時の日韓関係でも生じており、昔同じ国の人間であった世代から、別の国として育った世代へ韓国が交代する中で、日本の情報活動や外交を組み直す必要があったことが読み取れる。

現代の常識から見ると、日本の対韓国外交敗北の第一歩に見えるのだが、それは後知恵。
当時のいろいろな制約の中で、政治家と外交官がどのように対韓国外交を考えていたのかがよく分かる、色々と興味を掻き立てられる一冊である。

☆☆☆☆(☆4つ)

他のBlogの反応はこちら。
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本書を読んで思うのは、韓国側と比べて日本のステークホルダーの多さ。
これが故に、日本という国が前例踏襲に傾きがちで、一発勝負や大転換に弱いのがよくわかります。






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