もはや戻れない道を懐かしんでも……:「若作りうつ」社会 [社会]
精神科医が「成熟した年のとり方」のロールモデル欠如による精神病理を説いた一冊。
本当に本書に出てくるような「鬱病」が議論に値するほど存在するかどうかは分からないが、若さの価値が過大に評価されているというのは事実だろう。
【目次】
序章 年の取り方がわからない
第1章 「若作りうつ」に陥った人々の肖像
第2章 誰も何も言わなくなった
第3章 サブカルチャーと年の取り方
第4章 現代居住環境と年の取り方
第5章 二十一世紀のライフサイクル
終章 どのように年を取るべきか
筆者は若さにこだわる病理を、核家族化から来るロールモデルの欠如・経験の欠如から導こうとしている。
確かに、現代では世代の違う人間と同居したり、一緒のコミュニティで活動したりすることは少なくなってきているので一理ある指摘だとは思う。
だが、本当にそれだけか?と言われると個人的には疑問だ。
若さにこだわる病理が一般化したというのなら、私は経済状況からくる成功体験の不足こそが一番大恋な原因だと考える。
就職がうまく行かず、職場を点々とすることで継続的な人間関係を持つことができなかったり、コスト削減で自分より若手が入ってこないといったことは現代の40歳以下なら普通に経験していることだろう。
また、経済状況の悪化によって結婚率・出産率とも落ちる方向に働いているので、そうしたことからも世代の断裂が発生してしまう。もちろん、こんな世の中にしてしまった初老の指導者層を尊敬しようがないので、老いに対するイメージは必然的に悪くなる……。
と、私はこっちの理由のほうがメインじゃないかと考えている。
色々考える切っ掛けにはなるのだが、本書に書かれている事例の汎用性が怪しい上に、結論もやや一方的。手放しでオススメできる内容じゃないんですよね……。
☆☆★(☆2つ半)
他のBlogの反応はこちら。
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