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共産主義の残滓は東アジアにあり?:最後の転落 〔ソ連崩壊のシナリオ〕 [社会]


最後の転落 〔ソ連崩壊のシナリオ〕

最後の転落 〔ソ連崩壊のシナリオ〕

  • 作者: エマニュエル・トッド
  • 出版社/メーカー: 藤原書店
  • 発売日: 2013/01/25
  • メディア: 単行本



1976年の時点でソ連崩壊を予言したことで、筆者を一躍有名にした一冊。
私達東アジアに済む人間が崩壊前夜のソ連の姿を学ぶことで、日本の行く末そして世界最大の共産主義国家中国の行く末についての知見を得ることが出来る内容に仕上がっている。

【目次】
日本の読者へ〈インタビュー〉 (聞き手 I・フランドロワ)
フランス語新版への序(1990)

序 説 方法の問題 ――閉ざされた社会の研究
第1部 社会的自動進行過程
第1章 長期的に見たスターリニズムの本質
第2章 プロレタリアート独裁下のプロレタリアート
第3章 ソヴィエト経済の成長の停止
第4章 衛星国のテイクオフ
第5章 やはり資本主義の勝利

第2部 選択と心性
第6章 明晰だがファシスト的な支配階級
第7章 大衆の絶望と逸脱
第8章 抑圧システムの適用とその危機
第9章 内では現状墨守、外には軍事的拡張
第10章 改革か解体か
第11章 西側の態度

■〈新版〉への付録
1 ソ連、その現在の危機 ――死亡率に関する諸現象の分析による記述
2 ソ連のアフガニスタン侵攻 ――最後の転落か?
3 批評と解説


私が本書から得たものは二つ有る。
一つは、情報が遮断されているソ連に関して、筆者が崩壊を革新することができたプロセス。
筆者は偽造が当たり前になっていた経済統計や盛んにアピールされる軍事技術などに目をくらまされることなく、乳幼児死亡率の上昇という事柄をきっかけにソ連の崩壊を言い当てた。

一見重要でないデータをキーに真実を見抜く。この能力は一朝一夕で身につくものではないのだろうが、常に意識しておきたいものの見方だ。

そして、もう一つは、共産主義が軍事技術の拡大と国民の貧困を招かざるをえないという筆者の指摘。
共産主義国家においては、経済の低迷、監視の強化、軍事の拡大等避けがたい特徴が幾つか存在するのだ。
この部分は21正規の東アジアに済む人間としては非常に興味深い。ぶっちゃけて言うと、筆者が共産主義国家の特徴としてあげた多くの事例が大陸中国と日本にそれぞれ当てはまるのだ。

中国については曲がりなりにも共産主義を標榜しているので、移動の自由の制限・国民の自由の制限・貧富の差の拡大などが当てはまるのはある意味当然だ。ただ、経済面は自由化しているためソ連ほどには急激に崩壊するということはないのだろう。

逆に、日本については高い自殺率や無能だが地位の高い長老の存在などいくつかの特徴が当てはまる。日本が世界で一番成功した社会主義と言われるジョークも有るぐらいなので、日本にも共産主義的な特徴は存在しているのだろう。
こちらも、今すぐ崩壊するというレベルではないのだが、日本の弱点という意味では興味深い指摘だ。

文章自体はやや難関で読むのに時間がかかるのだが、21正規の東アジアに済む私達なら楽しみながら読むことが出来るだろう。

☆☆☆☆(☆4つ)

他のBlogの反応はこちら。
http://d.hatena.ne.jp/kanabow/20140527/p1
http://d.hatena.ne.jp/ujikenorio/20130321/p2
http://blog.livedoor.jp/miki00011/archives/51684614.html






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