自己責任には違いないけど、責めることはできない…。:最貧困女子 [社会]
女性貧困層のルポ。
この分野では第一人者の鈴木大介らしく、一人ひとりの貧困者の現実が目に浮かぶ、鋭いルポに仕上がっている。
【目次】
第1章 貧困女子とプア充女子
貧困女子=小島涼美さん(23歳)の場合
「わたしは犬以下」 ほか
第2章 貧困女子と最貧困女子の違い
「最貧困女子」は、セックスワークの底にいる
清原加奈さん(29歳)の場合 ほか
第3章 最貧困少女と売春ワーク
なぜ家出少女たちは売春の世界に吸収されていくのか
「非行少女」から始まる ほか
第4章 最貧困少女の可視化
ふんわり系美女の副業
地方週一デリヘル嬢 ほか
第5章 彼女らの求めるもの
加賀麻衣さん(21歳)の場合
母親がケツもちで売春の勧め ほか
本書で出てくるのは、精神障害や、教育の欠如によって貧困生活を送っている女性。
そして、それらの人々との対比例として、所謂マイルドヤンキーと呼ばれる、収入は少ないけれども地元に根を張ってそれなりに楽しく生きている人が取り上げられている。
この対比を行うところが筆者の見事なところで、
「収入が少なくてもちゃんとやっている人がいるのに、なぜ子どもの生活を脅かすぐらいの貧困になるのか?」という自己責任論に対する回答を最初から準備しているのだ。
マイルドヤンキーとして地元において定収入でやっていくことが出来るのは、容姿やコミュニケーション力に恵まれた人。そうした資質がなく、かつ、頭も良くない人は貧困のスパイラルに陥るしか無いのが現状なのだ。
それでも、バブル期のように世間の景気が良ければ単純労働でも十分に稼ぐことができたし、性風俗も需要過多だったので大金を稼ぐことができた。
ところが、現在では、単純労働ではシングルマザーとして子どもを養っていく収入は得られないし、学のない女性の最後の砦である性風俗でも供給過多になってまともに稼げなくなっている。
このように底辺層の生活を見事に描き出すとともに、女性の底辺層についてまわるセックスワークの現状も明らかにしている。
本書を読むと、セックスワークに従事する人が100%の自己責任ではなく、他にどうすることもできなくて、そうした状況に陥ってしまっていることがよく理解できる。
読む人が、社会保障とはなんなのか?という根本を考えざるをえない、良いルポルタージュだ。
最後に、本書で取り上げられるような貧困層が男性だったらどうなるか?とかんがえるともっと恐ろしくなる。男性だとセックスワークに従事することはほぼ不可能なので、犯罪者になるしか無いのではないだろうか……。
☆☆☆☆(☆四つ)
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