我が子を導く学問的手引:やさしい発達と学習 [その他]
教育心理学・教育発達学の基本的な内容がまとまっている。
有斐閣といえば法律書が有名だが、本書もクオリティが高く、出版社の実力がよく分かる。
小中学校の教師を志す人はおそらくこの辺りの内容を常識的なものとして学習しているのだろう。
それだけに、世間から求められているものとのズレを感じずに入られないのだが……。
【目次】
第1章 現代社会と子どもの発達
第2章 発達のとらえ方
第3章 論理的思考
第4章 記 憶
第5章 社会性
第6章 自己概念とパーソナリティ
第7章 学習への動機づけ
第8章 学級という集団
第9章 学習と学習形態
第10章 発達障害と学習支援
第11章 知 能
第12章 教育評価
本書の内容は、子どもの発達に関するアカデミックな内容の入門編。
中身は非常にわかりやすく、子どもの成長に関する議論が非常によく分かる。
教師を志す人や、子どもが居る親ならば読んでいて損はない。
実際、私も親の立場では本書から得るものが非常に大きかったといえる。子どもを人間的に成長させていくためにはどうすればいいかのヒントが満載だ。
それほど素晴らしい内容なのだが、教師になる人が本書のような学問をメインで修めてきたとなるとやや不安になる。
世間で教師に求められていることは、スキルの習得であって、人間的な生長のサポートではないからだ。
良くも悪くも、現在の教師に求められるのは、運動能力の向上・英語の習得・数学的思考力の向上といったスキルの部分。そうしたスキルを習得させてくれる人が「いい先生」と評価される。
本書で語られているような、子どもの発達のサポートという部分は世間から求められているものとはずれている。
この辺りのズレを教師がきちんと認識できているかはやや疑問。教員免許更新制が取りざたされる根っこはこういうズレから生じているといえるのだが。
最後は脱線して、教育のあり方に思いを馳せてしまったが、親が子どもを見守るという観点では有用な一冊。
子どもが幼稚園ぐらいになったら読んでみると面白い内容だ。
☆☆☆★(☆3つ半)
他のBlogのエントリを読もうとしても、大学の授業内容が多くヒットする。
もっと広く一般に進められる内容なのだが、アカデミックに閉じた読者しか居ないのだろうか?
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