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本当に「効く」のはこの語り口:仕事に効く 教養としての「世界史」 [歴史]


仕事に効く 教養としての「世界史」

仕事に効く 教養としての「世界史」

  • 作者: 出口 治明
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2014/02/22
  • メディア: 単行本



「第1章 世界史から日本史だけを切り出せるだろうか」
という出だしから分かるように、日本史と世界史をリンクさせて解説することに主眼が置かれている本。
高校時代に受験勉強で日本史・世界史を両方やった人にとっては当たり前の話が多いのだけど、高校時代に日本史・世界史両方をやる人は超少数派なので、それ以外の人にターゲットを取る本書のマーケティングがあたっているのだろう。
(筆者は京大法学部卒らしいから、受験勉強は日本史・世界史だった可能性が多分にある。)
【目次】
はじめに なぜ歴史を学ぶのか

◆第1章 世界史から日本史だけを切り出せるだろうか
――ペリーが日本に来た本当の目的は何だろうか?
・いま求められている日本史の知識について
・奈良時代の女帝たちは「男性の中継ぎ」だったのか
・ポルトガル船が漂着したから、種子島に鉄砲が伝来したのか
・ペリーが日本にやってきた、本当の目的は何だったのか
・交易が、歴史の重要なキーワードである

◆第2章 歴史は、なぜ中国で発達したのか
――始皇帝が完成させた文書行政、孟子の革命思想
・文字が残る決め手は筆写材料にあった
・始皇帝が完成させた文書行政が歴史の発達を促進させた
・孟子の革命思想が、中国の歴史をさらに発達させた
・中国の神話に大洪水が出てくるのはなぜか
・歴史がきちんと残るのなら自分の名前を後世に残したい
・科挙という制度は、紙と印刷の存在で可能になった

◆第3章 神は、なぜ生まれたのか。なぜ宗教はできたのか
――キリスト教と仏教はいかにして誕生したのか
・本章でお話ししたいこと
・ドメスティケーションの最後が、神の誕生だった
・最後の審判という概念はどのようにして生まれたか
・直線の時間と、ぐるぐる回る時間がある
・善悪二元論が、生まれてきた理由
・キリスト教と仏教はいかにして生まれてきたのか
・ゾロアスター教の永遠の火

◆第4章 中国を理解する四つの鍵
――難解で大きな隣国を誤解なく知るために
・一つめの鍵は中華思想にある
・二つめの鍵は諸子百家にある
・三つめの鍵は、遊牧民と農耕民の対立と吸収の歴史
・最後の鍵は、始皇帝のグランドデザインにある

◆第5章 キリスト教とローマ教会、ローマ教皇について
――成り立ちと特徴を考えるとヨーロッパが見えてくる
・本章を設けた理由
・「カトリック」とは何を意味する言葉なのか
・キリスト教が、ローマ帝国の国教になるまで
・ローマ教会の、悪戦苦闘が始まる
・せめぎあいが続くドイツ王とローマ教皇
・叙任権闘争と贖宥状、聖年、宗教改革
・ローマ教会の持っている三つの大きな特徴

◆第6章 ドイツ、フランス、イングランド
――三国は一緒に考えるとよくわかる
・知っているようで知らない国々
・三つの主要国は、どのようにしてできたのか
・最初は強大だったドイツが、だんだん細分化されていくのはなぜか
・フランスと英国の成り立ちは一緒に考えると、わかりやすい
・英国に議会の伝統が生まれた理由
・百年戦争が英国とフランスをはっきり別の国にした
・ヴァイキングの人たちはもとは商人であった

◆第7章 交易の重要性
――地中海、ロンドン、ハンザ同盟、天才クビライ
・生態系と交易との関係
・交易の道は、東から西へ
・地中海の交易ルートを巡って栄えた都市、衰亡した都市
・ロンドンが海上交易の中心になっていく理由
・ハンザ同盟の技術革新、発展と盛衰
・東の交易圏
・ユーラシアの交易とシルクロード

◆第8章 中央ユーラシアを駆け抜けたトゥルクマン
――ヨーロッパが生まれる前の大活劇
・もう一つの遊牧民がいた
・ユーラシアの大草原に生まれた史上最強の遊牧民の話
・トゥルクマンとマムルーク
・トゥルクマンがつくった大王朝、セルジューク朝
・トゥルクマンの武力とペルシア人官僚の組み合わせがインドに大国をつくった
・騎馬軍団の前に歩兵と鉄砲が現われた
・ヨーロッパという概念は遊牧民の進出が止まって誕生した

◆第9章 アメリカとフランスの特異性
――人工国家と保守と革新
・初めに、日本人のアメリカ観について
・人間の当たり前の心情を断ち切って生まれた国がある
・アメリカを応援して影響を受けたフランス
・人工国家に対する反動として近代的保守主義が生まれた
・人工国家だから、思いがけないことが起きる
・特にアメリカの特異性について

◆第10章 アヘン戦争
――東洋の没落と西洋の勃興の分水嶺
・英国がインドに抱いた野望
・英国はインドにアヘンをつくらせて中国に密輸した
・アヘン戦争の始まりと終わり
・たとえばアヘン戦争をGDPの変化で眺めてみる
・アヘン戦争から、歴史は西洋史観中心になってしまった

◆終章 世界史の視点から日本を眺めてみよう
・国と国家について
・国も人もピークがあり寿命がある
・なぜ、戦後の高度成長は生まれたのか
・週に一度でもいいから英字紙を読む
・日本の社会常識を、世界史の視点で考え直してみる


本書で書かれている歴史の内容自体は、さほど目新しいものではない。
筆者は生命保険会社の社長で歴史学者じゃないからそれは当然だ。

本書が凄いところは、冒頭に書いたように知っている人にとってはさほど珍しくない知識をそれ以外の大多数をターゲットにうまく売りだしたところと、歴史の知識に乏しい人が興味を持って読み進められるように語る語り口だ。

タイトルは「仕事に効く 教養としての「世界史」」となっているが、仕事に効くのは本書で書かれた世界史の知識ではなく、世界史を語る語り口の方だ。

自分の興味をもった趣味分野をこのようにわかりやすく、世に響く形で公表できるスキル。
このスキルはぜひとも身につけてみたいところだ。

☆☆☆★(☆3つ半)

他のBlogの反応はこちら。
http://blog.livedoor.jp/namuraya/archives/52026419.html
http://jiyugaoka.areablog.jp/blog/1000001051/p11140218c.html
http://www.apalog.com/ishibashi/archive/357
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http://www.ebinoki.com/diary/books/%E3%80%8E%E4%BB%95%E4%BA%8B%E3%81%AB%E5%8A%B9%E3%81%8F%E6%95%99%E9%A4%8A%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E3%80%8C%E4%B8%96%E7%95%8C%E5%8F%B2%E3%80%8D%E3%80%8F%EF%BC%88%E5%87%BA%E5%8F%A3%E6%B2%BB

書評では、「山川世界史」の方がマシっていう人も多いけど、本書のポイントはそこじゃないんだよね。
本書のようにうまく伝えるには、日本史の知識が当然必要なので日本史も勉強する必要がある。
加えて、この文章の書き方。
本書には間違いなく教科書を超えた力があります。







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