社畜から逃れようとし過ぎると社畜に戻っちゃうのでは?:あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。 [社会]
あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。
- 作者: 日野 瑛太郎
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2014/01/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
分量が少なくてあっさりと読めるのだが、内容も浅い一冊。
文体自体は面白いので、知識や考え方を仕入れるというよりも、純粋に楽しむことに主眼をおいて読むほうがいいだろう。
せめて、「なぜ社畜が生まれるのか?」というところで新たな視点が提供されていれば、もっと良い評価ができたのだが……。
【目次】
第1章 あ、今日は用事があるんで定時に失礼します。―ここがヘンだよ、日本人の働き方
日本の職場では残業をするのがあたりまえ
残業は「例外的なもの」のはず ほか
第2章 いえ、それは僕の仕事じゃないんで。―日本のガラパゴス労働を支える「社畜」
「社畜」とは何か?
こうして社畜が生まれた ほか
第3章 はい、将来の夢は毎日ゴロゴロ寝て暮らすことです!―社畜が生まれるメカニズム
小学校の段階から社畜教育は始まっている
就活を意識した社畜予備軍としての大学生活 ほか
第4章 えー、「従業員目線」で考えますと…―脱社畜のための8カ条
「やりがい」にとらわれるな
つらくなったらいつでも逃げていい ほか
本書は、「やりがい」搾取型のブラック企業に対する批判を書いた一冊。
やりがいで仕事をするあまり、企業ににいいように使われることをやめよう。という主張で、中身自体はありふれている。
はっきり言って、労働法の入門書の一冊でも読んだほうが労働者の権利にも詳しくなるし、役に立つはずだ。
労働法の入門書を超えるためには、なぜ「社畜」が生まれるのか?ということをしっかりと書けばいいのだが、本書で書かれているのは筆者なりの「社畜」の分類だけで、メカニズムにまでは踏み込めていない。
私が思うに、「社畜」になってしまう大きな要素は、自分の実力以上の給料をもらってしまうからだ。
実力以上の好待遇を得ると、やめてしまったら給与は下がるので(給与を維持するためには)会社で頑張り続けるしかなくなる。「社畜」が発生してしまう一番の原因は、日本企業の給与が高過ぎるのがその一因であろう。
と、するならば実力以上の給与をもらわず、実力の上昇に応じて昇給するような働き方をすることが必要になる。実力を上げる途中では仕事を通じて成長する必要があるから、ハードワークや一時的な待遇低下を甘受する必要がある。
逆に、実力が上がってしまえば当初の目的通り、待遇を求めて自分の権利を主張するべきということになる。
私はこのように、本来はインプットモードの低待遇で頑張る時期とアウトプットモードの高待遇を主張するべき時が交互に来るのがあるべき姿だと考える。
タイトルに有るように「あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。」というのはアウトプットモードの時なので、これをずっと続けると実力が上がらないので、結果として「社畜」になってしまう可能性が高い。
本書は踏み込みが足りないので、面白いエッセイの枠を超えられていないが、テーマ自体は非常に面白い。
もう少し深い内容について語られているとよかったのだが……。
☆☆(☆二つ)
他のBlogの反応はこちら
http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20140210#p1
http://rutoru.blog2.fc2.com/blog-entry-3036.html
http://illustration.blog.so-net.ne.jp/2014-04-02
http://inoueroumu.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/post-dd72.html
http://gjfreelance.net/blog-entry-145.html?sp
コメント 0