日本人の思う優位性はどこかずれている:イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る 雇用400万人、GDP8パーセント成長への提言 [社会]
イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る 雇用400万人、GDP8パーセント成長への提言 (講談社+α新書)
- 作者: デービッド・アトキンソン
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/10/21
- メディア: 新書
久しぶりに出会った面白い新書。
クール・ジャパンとか、日本の「おもてなし」と言った空疎な言葉が並ぶ今だからこそ、多くの日本人に読んでみて欲しい。
【目次】
第一章 外国人が理解できない「ミステリアスジャパニーズ現象」
第二章 日本の「効率の悪さ」を改善する方法
第三章 日本の経営者には「サイエンス」が足りない
第四章 日本は本当に「おもてなし」が得意なのか
第五章 「文化財保護」で日本はまだまだ成長できる
第六章 「観光立国」日本が真の経済復活を果たす
筆者は外資系金融機関を退職したイギリス人アナリストで、現在は日本の伝統工芸修復会社の社長。
このような経歴を持つ筆者が、日本の企業・行政の問題点を鋭く指摘している。
筆者が指摘する問題点は、大まかにいうと「非効率」、「根拠レス」、「顧客目線の欠如」、「投資不足」と言ったところだ。
「非効率」は日本人なら多くの人が同感するであろう箇所なので、あえて言うまでもないことが多い。
大きな問題は、その他の3つなのだ。
まず「根拠レス」については、日本の経営陣が数字を元にせずに、感覚や経験で判断を行っていること。そのため、誤った判断がなされ、その責任も追わなくていい仕組みが出来上がっている。
そもそも、必要な数字が取られていないので、判断が間違ったかどうかもわからないことが多いという絶望っぷりだ。「その数学が戦略を決める」が出版されたのは8年も前。
その頃から、根拠となる数字に基づいた経営は常識になりつつあったのに、日本のエグゼクティブはまだまだそのレベルに到達していないので、世界で負け続ける状態が続いている。
「顧客目線の欠如」は「英国一家、ますます日本を食べる」を読んでいても気になった。
日本企業は顧客が評価していないこだわりを持って日本製の優位を確信しているフシが有る。液晶テレビもゲームもそれで競争力を失ったのに、まだまだその悪癖は抜けていない。
特に、伝統分野の企業(食品・文化財観光など)ではその傾向が特に強いように見受けられる。
そして、最後の「投資不足」。筆者は文化財修復に書けるお金が少なく、現状維持に留まって、価値増幅のための投資にお金が回っていないと嘆いている。
これはデフレが20年続いた日本の病と言っていい点だろう。
デフレが長く続いたために、投資をする原資もないし、投資をしても結果としてうまくいかなかったことが多い。
そのため、投資をするマインドを持った人はマイナス点がついて、コストカッターや日和見主義者が上層部にたまっているのが今の日本だ。
だが、投資がされないこの状態が続くと、いずれは資源が枯渇してしまう。
このように日本人には耳の痛い正論が並んでいる本書。
だが、イギリス人の筆者が日本の伝統工芸分野で社長をやっていることからも分かるように、筆者は日本の潜在力には絶望していない。
現在の問題点と将来の希望を知るべく、多くの人に是非読んでもらいたい内容だ。
☆☆☆☆☆(☆5つ。満点)
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