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歴史は将来を予言できる:高層建築物の世界史 [歴史]


高層建築物の世界史 (講談社現代新書)

高層建築物の世界史 (講談社現代新書)

  • 作者: 大澤 昭彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/02/19
  • メディア: 新書



沖有人氏の本なんかを読むと、タワーマンションの価値は低層建築物をはるかに上回っているように思える。
でも、週刊誌なんかだとタワーマンションの構造上の危険性やメンテナンスの問題を強く主張しているものも有る。

そもそも、日本以外での高層建築物の位置づけってどうなってるんだろうか?
なんて思っちゃった人に最適の一冊。
高層建築物の歴史、国ごとの事情がわかり、今後の不動産の行く末を考えることが出来る材料になる。

【目次】
第一章 神々をまつる巨大建造物――紀元前3000年頃-紀元後5世紀頃の高層建築物前史

1 古代メソポタミアのジッグラト
2 古代エジプトのピラミッドとオベリスク
3 巨大・高層建築物の都市、古代ローマ
4 アレクサンドリアのファロスの大灯台
5 古代日本の巨大建造物

第二章 塔の時代――5-15世紀頃
1 中世ヨーロッパの城塞
2 ゴシック大聖堂
3 塔の都市、中世イタリア
4 イスラームのモスク
5 日本の仏塔

第三章 秩序ある高さと都市の景観の時代――15-19世紀
1 ルネサンス都市における高さ
2 宗教都市ローマの大改造
3 ロンドン大火と都市復興
4 国民国家の都市改造
5 近世・近代日本における「都市の高さ」

第四章 超高層都市の誕生――19世紀末-20世紀半ば
1 鉄骨、ガラス、エレベーター
2 万国博覧会と巨大モニュメント―クリスタル・パレスとエッフェル塔
3 シカゴ・ニューヨークにおける摩天楼の誕生と発展
4 第二次世界大戦前のヨーロッパの超高層建築物
5 全体主義国家における高層建築物
6 第二次世界大戦前の日本の高層建築物

第五章 超高層ビルとタワーの時代――1950-1970年代
1 アメリカの鉄とガラスの摩天楼
2 高さ世界一を競って―ワールド・トレード・センターとシアーズ・タワー
3 ヨーロッパの超高層ビル
4 日本における超高層ビル
5 西ヨーロッパにおけるタワー
6 共産圏におけるタワー
7 北米におけるタワー
8 日本のタワーブーム 1950-1960年代
9 高層化がもたらす影 1960-1970年代

第六章 高層建築物の現在――1990年代-現在
1 グローバル化する超高層建築物
2 アジアにおける高さ世界一の更新
3 中国における超高層建築物
4 ドバイとサウジアラビアの超高層建築物
5 ヨーロッパでの超高層ビルの増加
6 日本の超高層建築物の現在
7 自立式タワーの現在

終章 高層建築物の意味を考える


目次を見れば分かるように、ピラミッド・オベリスクの時代から、現代の高層タワーまで高層建築物の歴史と、国・地域ごとの事情を明らかにしている。
また、建築物の種類も、中世までの宗教建築物・近代以降の塔・近代以降の建物など、わかりやすく分類していて、私のような素人でも高層建築の歴史をすっと理解できるように書いてくれているとともに、歴史を踏まえて将来をある程度考えられるような作りになっている素晴らしい内容だ。

詳細な内容はぜひとも本書を読んで欲しいのだが、大雑把に言うと中世までは宗教・王権によって高層建築物が作られてきた。その歴史を踏まえて、近代以降の高層建築物の流れは大きく二つに分かれている。

一つは、欧州のように歴史ある高層建築物が地域のランドマークとなっている場合で、こうした地域においては新たな高層建築物の高さが制限されてしまうケースが多い。
例えば、市街地はナントカ大聖堂の高さを超えないことが条件となり、高層のタワーは旧市街地から離れた地域にしか建築できないようになっている。

もう一つは現存する歴史的な高層建築物がない地域(中東・中国など)や歴史的建物はあるが、ランドマークとしての機能を尊重されていない地域(米国など)だ。
こうした地域では、高層建築物に対して、都市の機能上の制限こそかかるものの、高さが制限されることはないので高層建築物が一等地に立ち並ぶことになる。

で、本書を読んで私の考える日本・東京の場合はどうかというと、条件は明らかに後者に近い。
東京において●●が見えるべしと合意されているような高層建築物はない(強いて言えば富士山なので、高層建築物を制限する理由にならない)。
また、現在の日本における高さ制限は諸外国に比べて厳しすぎるぐらいの条件なので、今後は東京都心・都心隣接23区に高層建築物がどんどん増えることが予想できる。
その流れの中で、タワーマンションは住戸として一般的なものになるだろうし、都心近くに住む人口は増えていくのだろう。

と、私の考えを書いてしまったが、素人がこうして考える事が出来るだけの良質な材料を提供してくれたのが本書。最近の新書は玉石混交で、明らかに石のほうが多いのだが、本書は数少ない玉の一つ。
多くの人にオススメできる内容だ。

☆☆☆☆☆(☆5つ。満点)

他のBlogの反応はこちら
http://d.hatena.ne.jp/jinseimeisoutyuu/20150222/1424575924
http://shoji1217.blog52.fc2.com/blog-entry-3202.html

意外と書評が少ない。
いい本なんだけどな……。
写真がカラーだと違う層の読者も取り込めたのかもしれませんね。






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