ドメスティックなオレオレ詐欺、グローバルな危険ドラッグ:危険ドラッグ 半グレの闇稼業 [社会]
裏社会をターゲットにした取材ではNo.1の溝口敦が危険ドラッグ業界を取材した本書。
このエントリで紹介した「詐欺の帝王」と並んで最新の半グレ犯罪の取材になっている。
【目次】
第1章 半グレが仕切る闇稼業
第2章 製造・販売業者たち
第3章 厚労省麻薬取締部の取り組み
第4章 危険ドラッグの鑑定法
第5章 ドラッグ認可制の誤算
第6章 壊滅する流通網
第7章 半グレのシノギが向かう先
最近の半グレ犯罪の中でもメジャーなのはオレオレ詐欺と危険ドラッグ。
ところが、この両者は全く異なる性質を持っている。
オレオレ詐欺は家族と離れて暮らす高齢者を対象にした犯罪で、そうしたターゲットが多い日本独自で発達した極めてドメスティックな犯罪形態だ。
対して、危険ドラッグは全世界的に流行しているものが日本に入ってくる、非常にグローバルな犯罪形態になっている。
そうした世界中でのドラッグ流通の一環として日本にも危険ドラッグが入ってくるのだが、そこには日本ならではの特徴が当然存在する。
本書で述べられている日本の薬物の最大の特徴は、日本の汚染度は極めて低いということ。
日本では汚染度が極めて低いので、マーケットが小さく売れ筋の薬や独自のカスタムがされた薬が入ってくることもなく、良い循環が保たれているのだ。
以前、私はこのエントリで、安全なドラッグを国営で販売すべしと書いたことがある。
経済学的に見ると一理ある内容だと今でも思っているのだが、危険ドラッグの汚染が進んで他の対処がなくなった外国ではすでに取り組まれているが、失敗したということだ。
筆者は日本は水際対策が非常にうまくいっており、汚染度も低いので規制を弱めるよりも今の規制を強化してクリーンで在り続けることを目指すべきだと主張している。
世界の動きと”クリーンな”日本の現状がわかる本書。
読み物としては「詐欺の帝王」のほうが面白いのだが、危険ドラッグのセルサイドから見た現状がよく分かる一冊。十分に取材されていて、読むに値する内容だ。
☆☆☆★(☆3つ半)
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