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単なる色物ではない本当の棋士。:棋士マイケル・レドモンド [その他]


棋士マイケル・レドモンド

棋士マイケル・レドモンド

  • 作者: マイケル・レドモンド
  • 出版社/メーカー: 出版芸術社
  • 発売日: 2015/08/27
  • メディア: 単行本



プロの囲碁棋士マイケル・レドモンド九段が囲碁との関わりを中心に今までの自分の人生について書いた自伝。
囲碁の棋譜なども出てきて、囲碁のルールを全く知らないと面食らうのだが、米国に生まれて囲碁のプロになるために日本にやってきた(そして、九段という高位のプロになってしまった)人生は、囲碁を全く知らない人にも面白く読めるだけのバラエティに富んでいる。
【目次】
1 GOING TO JAPAN
2 修行の日々
3 夢が実現、プロ棋士へ
4 NHK囲碁講座の講師に
5 私の実戦から
6 私と碁の現在・将来


米国に生まれた筆者がどういった環境で囲碁と出会い、日本でプロを目指すためにどのような生活を送って来たのかが書かれているのが本書の前半。
そして、50歳という年齢で弱くはないのだが超一流の実績を残せなかった筆者が今後、どのように囲碁に取り組んでいくのかを記したのが後半。

本書はそれぞれに魅力がある。

まず、前半部分は16歳という若さで自分の趣味を仕事にするべく異国である日本にやってきて、言葉もよくわからない中、住み込みで内弟子生活を送りながらプロを目指す話が中心。
この部分については、普通の人ではとても送れない人生なだけに、面白くないわけがない。
鉄板の内容だ。

前半部分で十分に元が取れたと思ったのだが、意外と良かったのは後半部分。
50歳という引退を視野に入れる人も現れる年齢で、超一流に離れなかったけど、九段という最高位に到達したことからもわかるように決して弱くはなかった囲碁棋士人生。
客観的に見ると、本書は人生の振り返りで終わっていてもおかしくない環境だ。

ところが、筆者は現在の囲碁を取り巻く環境を冷静に分析し、囲碁の競技人口が減少していることに危機感を抱き、プロの一員として普及に取り組むことの必要性を感じ、実際に行動している。
この「実際に行動」に移せる人は少ないだけにそれだけでも感心してしまう。
また、普及への取り組みもただボランティアをするだけではなく、米国生まれという囲碁人生にはハンデであったであろう事柄を活かして欧米での囲碁普及に取り組んでいる。

更に、競技者としても現役である以上高みを目指すべきとの持論を展開し、半引退の立場を否定している。
私は囲碁のプロ棋戦については詳しくないので、どの程度勝てているのかはわからないのだが、競技者として高みを目指すために、中国の古流の棋譜を研究し、「黄龍士」を監修するなど、精力的に活動しているようだ。

波乱の人生を送った人が、自分の人生を捧げた競技を振り返って書いた一冊。
それだけでも十分に価値がある一冊。筆者の頭の良さがわかるように、囲碁に詳しくない人でも棋譜を飛ばせばかなり読みやすくなっている。

☆☆☆☆(☆4つ)

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