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ビッグデータはなんのため?:ナンバーセンス ビッグデータの嘘を見抜く「統計リテラシー」の身につけ方 [数学]


ナンバーセンス ビッグデータの嘘を見抜く「統計リテラシー」の身につけ方

ナンバーセンス ビッグデータの嘘を見抜く「統計リテラシー」の身につけ方

  • 作者: カイザー・ファング
  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2015/01/29
  • メディア: 単行本



最近ではすっかり定着してきた感のあるビジネス用語”ビッグデータ”
だが、ビッグデータのはやりとともに、統計のいい加減な分析やごまかしのリスクも増加してきている。統計をごまかすのはどういうやり方があるのか?ごまかすつもりはなくともトンチンカンな結果を導く統計分析にはどんなパターンがありうるのか?統計はどこまで役に立つのか?
そんな疑問に答えてくれる一冊が本書だ。

内容としては統計を対象にした本なのだが、「統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門」などと違い、本書を読むにあたっては、数学的な素養は全くいらない。
統計を駆使してくる部下に対して違和感を表明するべき上司の立場に立った時にどうすればよいのか?がよく分かるわかりやすい書き方をしてくれている。

【目次】
第1部 ソーシャルデータ

1 なぜロースクールの学長はジャンクメールを送り合うのか?
 1 ランキングの「精度」
 2 欠損値の魔法
 3 中央値のマジック
 4 就職統計のゲーム
 5 サバイバルゲームと密約
 6 連座制
 7 不況知らずのロースクール
 8 法律ポルノ
 9 ドーピングをしても勝てない場合
2 違う統計を使えばあなたの体重は減るだろうか?
 1 アメリカのアキレス腱
 2 BMIの幻想
 3 判定基準の裏切り
 4 何が問題なのか
 5 本当の問題は何か
 6 リバウンドの罠

第2部 マーケティングデータ

3 客が入りすぎて倒産するレストランはあるか?
 1 利益と損失の微妙な境界線
 2 「もし○○だったら」
 3 顧客セグメントを分析する
 4 タダより高いものはない
4 クーポンのパーソナライズは店舗や消費者の役に立つか?
 1 的外れのクーポン・メール
 2 失敗の喜び
 3 プラダを着た悪魔の推理
 4 ターゲットはどこに
 5 新規の客を獲得せよ
 6 グルーポンのターゲティング
 7 成長の苦しみ
5 なぜマーケターは矛盾したメッセージを送るのか?
 1 特大のバッグで妊娠がバレる
 2 企業はあなたの何を知っているのか
 3 種々雑多なメッセージを送信する
 4 ビッグデータは救世主なのか

第3部 エコノミックデータ

6 失業率の増減をあなたが実感できないのはなぜか?
 1 巧みな
 2 季節調整のスパイス
 3 この魚は腐っている
 4 古き良き政治と統計
 5 コンピュータの想像の産物
7 誰がどうやって物価の変動を見極めているのか?
 1 見えるものと見えないもの
 2 平均化されたくない
 3 コア・インフレ率
 4 掘って、掘って、掘りまくれ
 5 平均への畏怖

第4部 スポーツデータ

8 コーチとGMどちらが勝敗のカギを握るか?
 1 統計学者をキッチンに招く
 2 ファンタジーの世界で夢をかなえる
 3 コーチの第一印象
 4 コーチの統計学的印象
 5 コーチがGMの助言を無視する
 6 コーチの足かせ
 7 運という要因
 8 データの「レシピ」を公開
エピローグ
 1 人生の3時間を費やした難題
 2 3日間で6000語を処理する


本書は、第一部で統計のごまかし方を、第二部以降で統計はどんなときに役立って、どんなときに役立たないのかを示している。

第一部の統計のごまかし方は企業で数字を扱う部署にいる人にとっては当たり前の注意点が書いているにすぎないのだが、それ以外の人にとっては目新しい内容かもしれない。
統計にも処理のルールが有り、そのルールは(無限のコストを掛けられない前提で)人が作ったものである以上、限界もあるし穴もある。
そして、ルールに穴がある以上、そこを狙ってくる人も当然のように存在するのだ。

手が後ろに回らない範囲で最大限の効果を狙って数字を作ってくる人は、会計の世界だけでなく統計の世界にも当然存在しているというのが本書の第一部で書かれている。

第二部以降の統計はどんなときに役立って、どんなときには役立たないか。こちらは数学を専門としない多くの人に役立つ内容だ。
本書には示唆に富んだ内容が、面白い語り口で多く書かれておりそのすべてを列挙すると長過ぎるので割愛するが、一番興味に残ったのは「統計を何のために取るのか?」を意識したうえで活用しないと統計が独り歩きしてしまうということ。

例えば、「相対的貧困率が上昇している」といった場合、それによって何が問題なのか?問題を解決するためには何をすればよいのか?を考える必要がある。
決して「貧困率の定義は●●だから現実と合っていない」といった的はずれな回答をするべきではないのだ。
(もちろん、貧困率の上昇が大した問題では無い場合は、問題なしという結論でもいい)

読みやすく、役に立つ本であることは間違いない一冊。
ビジネスの現場にいる人、特に意思決定者なら読んでおいて損はない。

☆☆☆☆☆(☆5つ。満点)

他のBlogの反応はこちら。
http://smoothfoxxx.livedoor.biz/archives/52187283.html
http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20150910
http://zassou-usa2008.seesaa.net/article/417250646.html






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