狭い業界でお金を回しあっている?:ニューカルマ [小説]
このエントリで書いた「狭小邸宅 」の筆者が書いた第二作目。
今回は、マルチビジネスがテーマ。
前作の不動産営業の主人公共々、デフレ不況とコンピュータの発展で、一昔前までは当たり前に存在していた”普通の職場”がなくなったことから非人間的な仕事で食っていかざるをえない状況がうまく描かれている。
筆者はこういうテーマが得意なのだろう。
前回の不動産営業の主人公とは違って、本書で出てくるマルチビジネスの主人公は馴染みがない職業だけに、心情が想像できにくい。
その分、実際にマルチビジネスにハマっている人の思考・心情という面で新たな発見があるのだが・・・
本書を読んで気づいたマルチの特徴は以下。
・マルチビジネスというのは狭い業界(ヘビーユーザの決まっている業界)だということ。
・当然のごとく儲からないビジネスなのだが、いかにも儲かっているように見せるのがポイントだということ。
・マルチにハマると、マルチ以外の人間関係は無くなってしまうということ。
(これは、東野圭吾の「殺人の門」でも豊田商事をテーマに同じような描写があった)
・一度ハマると抜けられないということ。
普通の人は、本書の冒頭で出てくるマルチに誘われる経験はあるだろうが、そこから先の経験は無いはずなので、興味を持って読むことができるだろう。
私が本書で一番驚いたのは、マルチにハマると抜けられないということ。
一度失敗しても、大成功しても、結局のところマルチに戻ってくる主人公が描かれており、非常に衝撃的であった。
正直、内容としては前作の「狭小邸宅 」のほうが面白いんだけど、想像できにくい世界という意味では本書の方に軍配があがる。
昔なら普通の職業につけていた人がこんな商売につかなければ食っていけないのは悲しくはあるのだが、それを自業自得としか感じさせられないのがマルチビジネスの実態なのだろう。
☆☆☆★(☆3つ半)
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