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多数決は過去の遺物か:「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する [数学]


「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する

「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する

  • 作者: 坂井 豊貴
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2016/07/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



母集団の意見をより忠実に反映する決め方は何か?
というテーマについて論じた一冊。

小学校のころから当たり前のように使われている多数決は数学的には母集団の意見を正確に反映できない。
多数決を使うことにどんな問題があって、より正確な母集団の意見の反映に向いた決め方は何か?
これらについて書かれた非常に面白い一冊だ。

【目次】
第1部 決め方を変えると結果が変わる

第1章 民意は選挙結果からはわからない
大阪都構想の住民投票から何が読み取れるか?
「政治家を選ぶこと」は「政策を選ぶこと」ではない
「票の割れ」が起こると多数決はまともに機能しない
政治は「決め方」に翻弄されている

第2章 「民主的な」決め方を考える――ボルダルール
多数決の投票用紙では「2位以下」を書く欄がない
「決選投票付き多数決」と「ボルダルール」、どちらが優れているか?
「ボルダルール」では「広く支持される人」が選ばれる

第3章 一騎打ちで選択肢を競わせる――総当たり戦
誰が一番支持されたかわからないデンマーク首相選
クリントンは「票の割れ」を利用して勝った?
「多数決サイクル」があると、議場は議長の思いどおりになる

第4章 決め方が変わると歴史が変わる
ボルダルールではリンカーンは敗北する
修正は認められたのに立法されなかった「パウエル修正案」

第2部 三択以上の投票で優れている決め方は何か

第5章 決め方を精査する――ペア勝者とペア敗者
決め方によって5通りの結果が出る「ナーミの反例」
ペア敗者を絶対選ばない決め方を考える
ペア勝者基準を「ある程度」尊重する決め方を考える

第6章 ベストな配点を考える――スコアリングルール
なぜボルダルールの配点がよいと言えるのか?
スコアリングルールはペア勝者を選ばないことがある

第7章 「絶対評価」で決めるとどうなるか――是認投票
是認投票はほかの選択肢の影響を強く受ける
ほかの選択肢の影響を受ける「コントラスト効果」

第3部 二択投票で多数決を正しく使いこなす

第8章 多数決で正しい判断ができる確率――陪審定理
陪審員の人数が多いと、正しい判断をしやすくなる
多数決の結果が正しくなる確率を計算する

第9章 多数決と暴力は何が違うのか
多数決が暴力以上の価値を持つとき
マンション自治会の「議長委任」はなぜダメなのか
多数決は「どうでもよいこと」を決めるのに向いている

第10章 国会は多数決を正しく使えているのか?
憲法を使って多数決に制限をかける
国会は党議拘束によって少数派支配が起きている
安保法案の合憲性はどう判断すればよいか

第11章 法廷の「決め方」を分析する
理由で多数決をとるか、結論で多数決をとるかで判決が変わる
裁判員裁判ではどのように量刑を決めるか
ペア勝者を選べる「中位選択制」

第4部 多数の意見を尊重すべきでないとき

第12章 費用分担をフェアに決める
費用分担を決めるのに最適な「シャプレー値」
「凸結合」で住民たちを納得させる
「中位選択肢」で妥協点を決める

第13章 「決闘への満場一致」は尊重すべきか
2014年には15人が決闘罪で捕まった
決闘は日本社会に受け入れられている?

第14章 個人の自由と満場一致はときに対立する
国家や社会による個人への干渉はどこまで許されるのか――「危害原理」
自由主義のパラドックス
自由の領域を平等に保護する


多数決で一番問題になっているのは何か?
端的に言えば死票の多さだ。
多数決は第2位以下の順番をつけることができないので、「自分の好みは除外して有力候補に投票する」か「実質的な棄権を承知の上で自分の好みに投票する」のどちらかを選ばなくてはならない事態が頻繁に発生する。
そのため、母集団の中でセカンドベストの選択肢が行われにくい。

正直、本書を読めば多数決は決め方としては優れたところの少ない決め方だと思える。
多数決で優れているのは、直感的に正義が分かりやすいという点と、決め方が簡易であるという二点ぐらいだ。
民意の反映という点では劣った決め方なのだ。

では、どういう決め方が優れているのだろうか?
本書では様々な決め方が紹介されており、一長一短があるのだが、筆者イチオシはボルダルール。
1位3点、2位2点、3位1点の得点を与えて最多得点を選択するやり方だ。
このやり方ならば、セカンドベストが選ばれ母集団の納得が高まるのだ。

このように、意見の決め方はいろいろあるし、多数決は決して唯一の優れたルールではない。
だが、世の中では多数決だけが唯一の民意反映のように見えている。
おそらく、学校教育と法律の影響が大きいのだろうが、そんな状況であるからこそ、学校教育において多数決に限られない意見集約の方法を教えるべきだろう。

世の中には選挙のほかにも、企業の取締役会やマンションの管理組合など多数決を使う場面は数多く存在する。多数決は決して民意の正確な反映ではないので多数決以外の決め方に光が当たる世の中になってもらいたいものだ。

☆☆☆☆(☆四つ)

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